2018年04月25日
ベームの至芸を俯瞰できる22枚のバジェット価格盤
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カール・ベームがウィーン・フィル及びベルリン・フィルを振ったセッション録音の中から、複数の作曲家の交響曲を網羅したセット物のリリースは今回が初めてになる。
ベートーヴェン、ブラームス、モーツァルトとシューベルトの交響曲全曲を22枚のCDにまとめたユニヴァーサル・イタリーの意欲的な企画のひとつと言える。
尚ブラームスでは『ハイドンの主題による変奏曲』、『アルト・ラプソディー』及び『悲劇的序曲』が含まれているが、ベートーヴェンでは序曲は除外されている。
またこのセットにハイドンが組み込まれなかったのは残念だが、とにかくこれでベームの古典派からロマン派にかけての交響曲の世界とその至芸が理想的に俯瞰できることになる。
既にベーム・ファンであれば説明は要らないが、ベートーヴェン(1970-72年録音)とブラームス(1975-77)がウィーン・フィル、モーツァルト(1959-68)とシューベルト(1963-71)がベルリン・フィルとの協演で幸い音質も良好だ。
ベームの目指した演奏は、一言で言えば音楽作品の聴衆へのダイレクトな伝達で、それを阻むような恣意的な要素や不必要と見做される一切の仲介手段を退けたことだろう。
他の指揮者に感じられるようなカリスマ性や、魅力的な外見などとはそれほど縁の無い職人気質の芸術家だった。
指揮法も体全体を使った派手な身振りやこれ見よがしのアピールなどはしなかった。
それにも拘らずオーケストラから溢れ出るような高い音楽性が引き出され、作曲家がイメージしていたのはこうした音楽だったのかと納得させられる音響が最短距離で再現された。
そこには喜びも悲しみも、また甘美な抒情や静謐も、そして英雄的な力強さも硬直することなく総てが自在に、しかも絶妙な中庸を持って表現されている。
しかしそのためにはオーケストラとの厳格な下稽古やリハーサルが欠かせなかったことは周知の通りだ。
だからこそ彼の音楽からは一朝一夕には成就できない、作品に対する徹底した見識と磨きぬかれたセンスが感じられるのだろう。
ブックレットは30ページほどで、曲目データの他にベームのキャリアが英、伊語で簡潔に掲載されている。
ボックス・サイズは13X13X6cmで装丁はしっかりしているが、それぞれの紙ジャケットは白地に曲目がプリントされたシンプルそのもののデザイン。
このページのタイトルには当初リミテッド・エディションと書かれていたが、実際にはボックスにもライナー・ノーツにもその表示はない。
確かにこうしたバジェット価格のセット物は通常1回限りのリリースになるので再版が望めないという意味だろう。
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