2018年05月05日
栴檀は双葉より芳し、モーツァルト・ピアノ音楽の奇跡
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幼少期に書いたメヌエットなどの小品をはじめ、バッハに触発されて誕生したと言われる雄大な『前奏曲とフーガ』、即興的に奏されるカプリッチョ、変化に富んだ曲想の3曲のロンド、深い味わいを湛えたアダージョ、バッハに敬意を表して書かれた『小さなジーク』などを収めた、モーツァルトのピアノ作品の変遷を辿るアルバム。
このCDのタイトルは『リトル・モーツァルト』だが、実際には前半の10曲はモーツァルト5歳から6歳の時に書かれた一種の習作で、父レオポルトが姉ナンネルの練習帳に書き込んだ作品集から復元されたものだ。
一方後半の10曲は後年ウィーン時代の小品集から構成されていて、彼の天才性の萌芽とその驚くべき成長への軌跡を辿る興味深い企画だ。
また1枚のディスクのプログラムとしても充分鑑賞に堪える充実した内容になっている。
これらの曲目はヘブラーの新旧モーツァルト・ソナタ全集にも組み込まれていないので、ピアノ・ソロのための作品を補完するコレクションとしても貴重な1枚だ。
モーツァルトの幼年期のピアノ曲は2声部でシンプルを極めているが、作風はどれも明快でしっかりした骨格を持っていることが分かるし、次第に不協和音を採り入れたり音楽に陰翳を加えて音楽的な深みが出てきている。
父レオポルトが計画したヨーロッパ大旅行の当初の目的は天才少年を利用した名声とそれから得られる収入や息子の将来のための有利な職探しだったとしても、必然的に彼の音楽教育のためにヨーロッパの名高い教師や音楽家との交流を積極的に行った。
皮肉にもモーツァルト自身の就職活動は失敗に終わったが、そうした研鑽の成果が後半の10曲に見事に開花していると言えるだろう。
ピアニストがモーツァルトのスペシャリスト、イングリット・ヘブラーなのが嬉しいが、トラック14幻想曲ハ短調K396及びトラック17ロンドヘ長調K494の2曲だけはアルトゥール・バルサムが弾いていて、1961年のやや古い音源が収録されている。
幸い上記のアマゾンのページには曲目リストと試聴欄が設けられているので参照されたい。
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