2018年05月07日
アンチェル、チェコ・フィル渾身のドヴォルザーク『レクイエム』
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このセッションが録音されたのは1959年だが、先ずその鮮烈な音質に驚かされる。
最近この時代の録音を頻繁に聴いているが、いずれの演奏も当時のオーディオ・エンジニア達が録音に懸けた情熱が私達の想像する以上のものであったことが示されている。
このスプラフォン音源は本家の他にもドイツ・グラモフォンその他からリイシュー盤として繰り返しリリースされている。
しかしグラモフォン盤は余白にそれほど関連性のないイェルク・デムス伴奏、フィッシャー=ディースカウによるドヴォルザーク宗教曲集をカップリングしている。
ちなみに『レクイエム』と双璧をなすもうひとつのドヴォルザークの宗教曲『スターバト・マーテル』の同メンバーによる正規録音はないようで、昨年ライヴ盤がターラからリリースされたが、それは1962年のモノラル録音で、この『レクイエム』より後のものだが音質ではかなり劣っている。
ソロ以外はオーケストラ、コーラス共にチェコ勢で固めているが、アンチェルの指揮から表現されるのはドヴォルザークの国民楽派の作曲家としてのプロフィールよりも、ひとえに死者を悼む気持ちとそれへの共感が深く示されている。
レクイエムはカトリック典礼用の死者のための鎮魂ミサ曲だが、彼がユダヤ教徒であったとしても、死に対する諦観やそれを乗り越えなければならない宿命は共通するものだったに違いない。
この演奏に戦時中強制収容所で家族を失ったアンチェル自身の体験が反映されていることは間違いないだろう。
しかし彼の解釈はそうしたエモーションをダイレクトにぶつけるものではなく、情念が常に音楽的に高度に昇華され、結晶のように収斂されているために、そのサウンドには特有の透明感が醸し出されて更に奥深い印象を与えている。
ソロを歌う歌手にはソプラノにマリア・シュターダー、テノールにはエルンスト・へフリガーという当時最高の宗教曲のスペシャリストを布陣している。
彼らはこの時期並行してカール・リヒターとバッハの録音にも抜擢されているだけに、その真摯で飾り気のない歌唱に好感が持てる。
ちなみにアルトにジークリンデ・ヴァーグナー、バスがキム・ボルイ、コーラスはプラハ・フィルハーモニー合唱団というメンバーで、歴としたステレオ録音。
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