2018年05月09日
ブロムシュテット、グランド・マナーによるモーツァルト最後の交響曲
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ドイツ王道の音楽を得意とする名匠ブロムシュテットによる香り高いモーツァルトで、奇を衒うことなく、あくまでも美しく夕映えのようなモーツァルトの美点を余すところなく描いた名演。
古典的な手堅い構成の中にきめ細かな抒情を湛えたブロムシュテットの手法は、モーツァルト最後の交響曲2曲にも生き生きと示されている。
それはまたシュターツカペレ・ドレスデンの上滑りしない落ち着いた音色と頑固なまでに鍛えられた余裕のあるアンサンブルによって確実に裏付けられている。
このディスクはUHQCDバージョンで、音質の鮮明さと同時に分離状態でも従来盤を上回っていることが明確に感知される。
シュターツカペレ・ドレスデンの柔らかい音色美がUHQCDにより瑞々しく蘇り、彼らの毅然として引き締まった演奏を更に引き立てる結果になった。
ブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデンによるモーツァルト演奏集で、これまでにUHQCD化された音源は首席奏者だったヨハネス・ヴァルターをソロに迎えたフルート協奏曲集、ディヴェルティメント集及びこの2曲の交響曲になる。
ピリオド・アンサンブルによる演奏形態が主流になっている中で、これらはモダン楽器によるモーツァルト演奏集の最上位に置くべき選択肢である筈だ。
第40番ト短調のイン・テンポを保った溌剌とした表現からは、それまでのあざとい激情や鬱状態の音楽としてではなく、モーツァルトの死にまつわるエニグマとは切り離された、スコアに記された音楽そのものに語らせた現代的な解釈であることが理解できる。
鑑賞を始めて気付いたことだが、通常の演奏では2本のクラリネットが加わるモーツァルト自身の改訂稿が使われるが、ここではウィンド・セクションにオーボエとファゴット2本ずつとフルートのみの初版が採用されている。
それゆえオーケストラの音色に陰翳が少なくなって、より古典的な形式と調和を重んじたグランド・マナーの演奏に仕上げられている。
晩年のモーツァルトが到達した作曲上のテクニックは驚くほど自由闊達だが、彼らのシンプルな演奏がかえってその妙味を明らかにしていると思う。
第41番『ジュピター』ではブロムシュテットの堅牢な造形の中に明朗快活で柔軟な表現が冴え渡っていて非常に均整の取れた演奏だ。
その意味ではジュピターというよりはアポロン的な美しさに喩えられるかも知れない。
メヌエットはベートーヴェンによってスケルツォに取って代わる終焉のサンプルだが、終楽章と共に対位法が縦横に活かされている。
バッハのフーガにも精通していたモーツァルトが晩年に辿り着いた音楽の理想の姿を表しているようで興味深いが、ここでもブロムシュテットの構成力が見事に発揮された緊張感と歓喜に満ちた再現が秀逸。
録音はどちらも1981年にドレスデン・ルカ教会で行われている。
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