2018年05月11日

パワフルだがバランスに長けたリヒテルのベートーヴェン


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このディスクに収められたベートーヴェンの3曲のソナタは、リヒテル円熟期の至芸が理想的な音質で捉えられている上に、米ミュージカル・コンセプツ社がアルト・レーベルとして供給している廉価盤で入手できるのが嬉しい。

いずれも旧オリンピア音源のライセンス・リイシューになり、英レジス・レーベルの廃盤に伴っての復活なので既に知られていた録音だがリヒテル・ファンには勿論、入門者にもお勧めしたい1枚だ。

彼のベートーヴェンは男性的でパワフルな一面、きめ細かな音楽表現が横溢していて決して武骨な印象を与えない。

特に穏やかな楽章でのレガート奏法による節度のあるカンタービレは、彼のデリカシーを良く示している。

表現力の幅が圧倒的に広いにも拘らず、そのバランスに長け中庸を心得ているところは流石にリヒテルだ。

第3番と第4番では初期に書かれたという理由で演奏されることの少ないこれらのソナタを、リヒテルは実に感動的に演奏している。

モーツァルトやハイドンとは一線を画したスケールの大きさ、そのなかに盛り込まれた強靭な精神は、ピアノ音楽の新しい時代の到来を告げており、そのことを実感させてくれる演奏である。

その作風の若々しさと作曲家の野心が見事に表されていて秀逸で、これほど音楽的に重みのある初期ソナタの演奏には、滅多に接することができない。

第27番ではドラマのモノローグのような第1楽章の開始と、温かく包み込むような優しさを再現した第2楽章の鮮やかな対比が極めて美しい。

演奏時間も10分ちょっとの短いものだが、第1楽章でリヒテルは実に内省的に嫋々と歌ってみせ、第2楽章では親愛感溢れる歌を聴かせる。

ピアノ・ソナタ第3番ハ長調Op.2,No3及び第4番変ホ長調Op.7は1975年にウィーンで行われたセッションで、ホールの名称は明記されていない。

一方第27番ホ短調Op.90は1971年のザルツブルク・クレスハイム城内でのセッションになる。

リヒテルはホールの音響にもかなりこだわった考えを持っていて、セッション録音の時にはピアノの鋭く乾いた音色を嫌って、比較的残響豊かな場所を選んでいる。

特にクレスハイムの音響はリヒテルの好みに合っていたようで、バッハの『平均律』全曲を始めとするいくつかの録音で大規模な音楽ホールとは一味違った特有の潤いのある響きを鑑賞することができる。

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classicalmusic at 00:04コメント(0)ベートーヴェン | リヒテル 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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