2018年05月21日
明瞭なタッチと泰然自若としたピアニズム、ヘブラーによるベートーヴェンの2曲のピアノ協奏曲
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イングリット・ヘブラーは決して幅広いレパートリーを開拓したピアニストではなかったが、幸い2曲のベートーヴェンのピアノ協奏曲を録音している。
その演奏は彼女の生涯の課題となったモーツァルトの亜流のように思われるかも知れないが、実際にはこのディスクでモーツァルトとは異なったアプローチで作品に取り組んでいることが明らかにされている。
つまりヘブラーはモーツァルトの延長線上にあるベートーヴェンではなく、控えめではあるにせよ次世代のウィーン楽派の担い手としてのベートーヴェンの野心的な試みを感知させている。
確かに現在の個性を前面に打ち出すピアニストのパフォーマンスに比べれば、こうした正面切った正攻法の演奏は売れ筋ではないだろう。
それくらい飾り気がなく、またスリルに満ちた疾走感とも縁のない再現だが、音楽的にはしっかりとした力強い構成感の中に確信を持った表現が充分な説得力を持っている。
協奏曲としては作曲家の処女作となるピアノ協奏曲第2番変ロ長調では、その瑞々しいフレッシュな感覚がヘブラーの毅然としたソロとガリエラ指揮するニュー・フィルハーモニア管弦楽団のどちらかというと室内楽的な軽快な雰囲気の中に良く表れている。
ガリエラはモーツァルトでやや失望させたがベートーヴェンではしごく真っ当なサポートをしているように思える。
確かにコリン・デイヴィスがこの2曲を指揮していたら、全く別物に仕上がっていただろうという印象は免れないのだが。
第4番ト長調でもヘブラーの解釈は決して革新的なものではなく、むしろ文字通りオーソドックスの典型のような表現である。
常にアーティキュレーションを曖昧にしない明瞭なタッチと泰然自若としたピアニズムから醸し出される格調の高さが抜きん出ている。
どちらも1970年のフィリップス音源で、リマスタリングされた音質は鮮明で分離状態も良好。
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