2018年05月29日
レオニード・コーガンの魅力的なアンコール・ピース集
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1958年、レオニード・コーガン初のアメリカ・ツアーの途上、ニューヨークで録音されたアンコール・アルバムが半世紀を経てようやく世界初CD化。
RCA及びソニーに録音された過去の音源をいわゆる箱物ではなく、単独あるいは2枚組のCDでリイシューするシリーズのひとつでミドル・プライスに留めてあるのが惜しまれる。
先に紹介したピエール・モントゥーとの協演盤で久しぶりにコーガンのハチャトゥリァンを聴いて、改めて彼の類い稀な音楽性と切れ味の良いヴァイオリン・ソロに感動したので、このアンコール・ピース集も聴いてみることにした。
58歳という全盛期に世を去ったヴァイオリニストが遺した、彼としては珍しく際物を集めた録音で、また音質にも優れているのでその意味でも貴重なCDだ。
鋼のようにソリッドな技巧とストイックなほどに真摯な音楽への取り組みから生み出される演奏は、ヴァイオリンという楽器の本質とその多彩な魅力を開示してくれる。
ショスタコーヴィチ、プロコフィエフやハチャトゥリアンなどお得意のロシア物を入れ込みつつ構成されたこのアンコール・アルバムは、そうしたコーガンの芸術に親しむ上で最上のイントロダクションと言えるだろう。
中でも白眉はツィガーノフ編、ショスタコーヴィチの『4つの前奏曲』で、この曲が最もコーガンの音楽的な趣味と奏法が一致した演奏のように思われる。
中には彼の演奏スタイルからは想像できないようなドビュッシーの『月の光』やグラズノフの『間奏曲』などの甘美なレパートリーも組み込まれている。
そこは流石に隙のないテクニックで巧みに洗練して、欠点を見せない完璧主義を堅持しているのもコーガンらしい。
彼のヴァイオリンはグァルネリ・デル・ジェズと思われるが、その磨き上げられた音色の美しさにも魅力がある。
惜しむらくはピアニストのアンドレイ・ミトニクの伴奏がいくらか変化に乏しく、コーガンのソロを充分引き立てていないことだろう。
こうした小品集では粋で遊び心のあるピアニストの起用が望ましいが、当時のソ連では当局の監視もあって自由主義的な演奏がままならなかったのかも知れない。
目の醒めるような超絶技巧で楽しませてくれるのが最後に収録されているサラサーテの『バスク奇想曲』でヴァリエーションの部分ではダブル・ストップ、アルコとピチカートの驚異的な応酬、それにフラジオレットなどが駆使されて爽快なフィナーレになっている。
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