2022年03月05日
雪解け時代、ソ連二大巨匠のアメリカ初登場の記録
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ダヴィッド・オイストラフとレオニード・コーガンは1950年代に相次いでアメリカ・デビューを飾ったが、このCDには彼らが丁度その時期にボストン交響楽団のサポートで録音した4曲が収められている。
東西冷戦当初、旧ソヴィエト連邦の芸術家たちは国外での活動が著しく制限されていたが、いわゆる「雪溶け」の時代になると、少しずつ世界に紹介されるようになってゆく。
この録音は、そうした時代におけるレオニード・コーガンとダヴィッド・オイストラフというソ連の2大ヴァイオリニストの、初のアメリカ・ツアーの際に収められたものである。
コーガンの驚異のテクニック、オイストラフの懐の深い演奏が聴きものだ。
ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲ニ短調とサン=サーンスの『ハバネラ』はコーガンのソロ、ピエール・モントゥーの指揮で、1958年のヒス・ノイズも殆んどない鮮明なステレオ録音だ。
ハチャトゥリアンの協奏曲ではモントゥーの創り出す色彩豊かな音響の中に、コーガンのヴァイオリンが冷徹とも言えるリズム感で鋭利に切り込んでいく鮮やかなテクニックが冴え渡っている。
第2楽章アンダンテ・ソステヌートの幻想的なカンタービレの美しさにもコーガンらしい媚びのないしめやかさが感じられる。
対照的に終楽章で彼は血の騒ぐような無窮動的な民族舞踏の曲想を漸進的なテンションを維持しながら息をもつかせず弾き切っている。
頻繁に聴かれる変則的なリズムをものともせずに一糸乱れずオーケストラを率いるモントゥーの棒さばきも爽快だ。
サン=サーンスの『ハバネラ』は、ソロにも管弦楽に呼応したエキゾチックな甘美さがもう少しあっても良いと思うが、コーガンの隙を見せないフラジオレットや重音奏法などの妙技が心地良い1曲だ。
一方後半の2曲、ショーソンの『詩曲』及びサン=サーンスの『序奏とロンド・カプリッチョーソ』はオイストラフののソロで、指揮はシャルル・ミュンシュだが、こちらは1955年のモノラル録音になる。
ただ幸いにも録音状態、音質ともに極めて良好な状態で残されていて、今回同シリーズで初CD化されたソナタ集と並んでオイストラフの貴重なアメリカ・デビュー・アルバムが復活したことになる。
またここではミュンシュの得意にしていたフランスのレパートリーということもあって、シカゴ交響楽団から巧みに情緒と陰翳を引き出して、これらの小品にある種の刹那的な魅力を与えている。
オイストラフのソロは磐石で、ショーソンの妖艶さからサン=サーンスの快活さまでを、全く無理のない自然体の奏法と大らかなリリシズムで表現している。
彼としては際物になる曲種だが、こうした作品でも彼の音楽性の豊かさ、優れた表現力とそれを支える万全のテクニックが充分示されている。
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