2018年05月27日
標題音楽と絶対音楽、宿命的な邂逅とせめぎあい、ブロムシュテットの『英雄の生涯』
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自らの生涯を描いたと言われるリヒャルト・シュトラウスの壮大な音絵巻を、ブロムシュテットの豊穣にして端正な指揮、R.シュトラウスを知り尽くしたドレスデンのオーケストラによる極め付きの名演。
1984年9月ドレスデン・ルカ教会でのセッション録音で、マスターの音質の良さに加えて今回のUHQCD化によって、レギュラー・フォーマットCDでのリーズナブルな価格帯で更に音質向上の可能性を追究しているところを評価したい。
確かに従来盤より見通しの良い鮮明な音場が得られているが、その中でブロムシュテットの緻密でありながら溢れるほどのアイデアと音楽性を湛えた指揮と、ルカ教会の広く豊かな音響空間に無理なく伸展するシュターツカペレの潤沢なサウンドがこの交響詩にひとつの理想の姿として映し出されている。
また随所に現れる名コンサート・マスター、ペーター・リミングのヴァイオリン・ソロも非常に巧妙でこの作品に欠かせない聴きどころを創っている。
彼は1972年のケンペとの共演でもソロを弾いているが、オン・マイクでヴァイオリン協奏曲のように録音されているのに対して、こちらではあくまでもオーケストラの一部から響いてくるように採音も改善されている。
リヒャルト・シュトラウスの多くの作品は作曲家自身、或いは彼の信任に厚かったカール・ベームの指揮によってドレスデンで初演されている。
また1970年代にルドルフ・ケンペがシュターツカペレ・ドレスデンとEMIに交響詩全曲録音を完成させている。
そうしたオーケストラに蓄積された貴重な経験を現代のシュターツカペレが受け継いで、R.シュトラウスの老舗としての伝統を引っ提げていることは無視できないだろう。
R.シュトラウスの時代に作曲上のオーケストレーションのテクニックは爛熟期を迎え、後期ロマン派から受け継いだ手法を更に発展させた、大編成のオーケストラのための洗練を極めた豊麗な音響で魅了する音楽が殆んど飽和状態に達する。
6管編成100名を超えるオーケストラ、3人の独唱者と大合唱のための『吟遊詩人タイユフェ』はその象徴的な作品だ。
彼の作曲した殆んどの作品はタイトルが付けられた標題音楽で、管弦楽曲でもオペラにおいても独自の管弦楽法が最高度に発揮されていて、音楽によって細密画的に描写するストーリーの展開に熟達している。
一方で標題音楽と絶対音楽との宿命的な邂逅とせめぎ合いがあり、彼の作曲上のスタンスを良く示している。
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