2018年06月06日
ブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデン入魂のシューベルト交響曲全集
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ブロムシュテットが手兵シュターツカペレ・ドレスデンを指揮したシューベルトの交響曲全集は1978年から81年にかけて旧東独のドイツ・シャルプラッテンに録音された。
現在でも同社のクラシック部門エーデル・レーベル、オランダ・ブリリアント・クラシックスからの廉価盤、キング・レコードからの日本盤のいずれも入手可能だ。
鮮明な音質に加えて分離状態の良いオーケストラの音響が広い音場の中で明瞭に再生される。
ちなみに日本では第8番ロ短調『未完成』のみがドヴォルザークの第8番とのカップリングでUHQCD化されているが、将来ブルーレイ・オーディオなどによるグレードアップを期待したい全集だ。
ブロムシュテットがこれまでに完成させた交響曲全集には他にシュターツカペレ・ドレスデン及びゲヴァントハウスとの2種類のベートーヴェン、ゲヴァントハウスとのブルックナーがある。
それらも録音史上に残るべき真摯で説得力のある演奏だが、このシューベルトも全く優るとも劣らない緻密な構成で力強い響きが導き出されている。
数多いシューベルトの交響曲全集の中で、これほど全曲が均質化され、気高く交響的な美感をもって演奏された例は少ないだろう。
シューベルトのなかにある独自の孤独感や、祖父がシュレージェン地方の農民であったという血の表明をドイツ的な堅実さで確実に表出し得ている。
シューベルトの本質を衝いた秀演で、全8曲どれをとってもむらがなく、禁欲的節度と気品を持った演奏だ。
ウィーンの伝統である楽天性や感傷とは一線を画しているが、そこにシューベルトの孤高の心情を描いており、ドイツ的とも言える堅実な感触が、第5番までの初期交響曲から堂々とした交響性を引き出している。
『未完成』では第1楽章の雄大なスケールと第2楽章の内面の豊かな歌、『ザ・グレイト』での山脈のように聳え立つ緊密な構築も特筆して良い。
さらに、シュターツカペレ・ドレスデンのふくよかな響きが素晴らしい雰囲気を味わわせてくれる。
シューベルトの交響曲の歴史的な評価はハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンに引き継がれる圧倒的な系譜からするといくらか影の薄い印象があるが、ロマン派交響曲の先駆としてベートーヴェンとも異なった手法で生み出されたところが2人のピアノ・ソナタの性格の違いにも一脈通じるものがあって興味深い。
しかも彼が僅か31歳で生涯を終えたことを考えれば、その後のメンデルスゾーンやシューマンに与えた影響は決して軽視できるものではないだろう。
ベートーヴェンは短いモチーフを極限まで展開して堅牢な楽曲を築き上げたのに対して、シューベルトはリート作曲家らしく、しばしば歌謡的な長いメロディーをテーマに持ち込んで、流麗で溌剌とした音楽に仕上げている。
そのために技巧を凝らしたフーガやそれぞれの楽章間の緊密な統一感などは望むべくもないが、平明な美しさとおおらかさには替え難いものがある。
シュターツカペレ・ドレスデンの音色は華麗ではないにしても、個人的なテクニックの水準は高くアンサンブルも洗練されていて、作曲家のカンタービレを自在に歌う融通性がある。
それは彼らがオペラ劇場ゼンパーオーパーのオーケストラ・ピットに入る楽団であることからも納得できる。
筆者は以前ブロムシュテット指揮する彼らのコンサートを聴いたが、その時ごく僅かな身振りから変化に富んだ多彩な音楽が引き出されるところに両者の信頼関係と強い絆を実感できた記憶がある。
尚シューベルトにはピアノ譜で遺された交響曲の草稿が他にもあり、このセットでは旧ナンバーリングで最後の2曲は第8番及び第9番になっているが、彼自身がオーケストレーションを施したものは事実上ここに収録された8曲になる。
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