2018年06月08日
モーツァルト的高度な愉悦、ブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデンによるディヴェルティメント集
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1976年から77年にかけてドレスデン・ルカ教会で収録された3曲のディヴェルティメント及びアダージョとフーガハ短調をカップリングしたドイツ・シャルプラッテン音源で、リマスタリングとUHQCD化によって鮮明な音質が得られている。
収録時間がいくらか短いが、その分音質に反映されていると思えばリーズナブルな価格と言えるだろう。
ブロムシュテット首席時代のシュターツカペレ・ドレスデンの、常に真摯かつ几帳面でありながら硬直した演奏に陥ることなく、ディヴェルティメントらしい活き活きしたスピリットが一陣の心地良い風が吹き抜けるような爽やかさを感じさせる。
彼らから紡ぎ出されるオーケストラの音色は甘美ではないにしても、若き日のモーツァルトのウィットを伝えるに相応しい落ち着いた響きと柔軟さで、ブロムシュテットの指揮に敏感に呼応しているところが秀逸。
ブロムシュテットの解釈は総じて中庸で、作為は一切排し、極めて自然に音楽を流している。
上質なオーケストラのアンサンブルと響きを最大限に活かしながら、バランスよく爽快に聴かせて、特に高弦部の清澄で古雅な響きは傾聴に値する。
近年のブロムシュテットの円熟ぶりからすると今一歩の感はなきにしもあらずだが、伝統的なモーツァルト演奏としての価値は充分にある。
モーツァルトは作曲家としてのシリアスな能力が問われる仕事、つまり劇場作品や宗教曲、交響曲や協奏曲、弦楽四重奏曲などの他に、肩の凝らない娯楽機会用のアンサンブルやオーケストラル・ワークでもかなりの作品を遺している。
勿論こうしたジャンルだからと言って彼が手を抜いて作曲したわけではなく、むしろ諧謔の天才たるモーツァルトの機知とユーモアが高度な音楽性を伴って示された優れた作品群であることに違いない。
このディスクに収録された3曲のディヴェルティメントはザルツブルク時代の作品で、16歳の若書きとは言え後の交響曲に発展する前のミニアチュアにも喩えられる、既に完成したテクニックが颯爽とした曲想に垣間見える。
アダージョとフーガは明らかにバッハの対位法作品からの影響を受けた作品で、曲の構成からバロック風に名付ければさしずめプレリュードとフーガになるだろう。
しかしアダージョは鮮烈だがもはやバロック的な深刻さがそれほど感じられない、どちらかと言えばロココ風の優美な嗜好が感じられる。
モーツァルトは少年時代イタリア旅行でマルティーニ神父から対位法ののレッスンを受けているが、宗教曲以外でも弦楽四重奏曲や最後の交響曲『ジュピター』の終楽章のように高度なフーガの作法にも熟達していたが、このフーガの後半でのストレッタで次第に緊張感を高めていく彼のテクニックが証明されている。
この作品はピアノ連弾用として作曲され、その後モーツァルト自身によって弦楽合奏用にオーケストレーションされたが、厳格な雰囲気の中に瑞々しい美しさを湛えている。
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