2018年07月15日
奔流のトリオ、ルービンシュタイン、フルニエ、シェリングの協演
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尽きることのない奔流を感じさせる名演。
演奏家としては最晩年にあったアルトゥール・ルービンシュタインのリーダーシップがフルニエ、シェリングとの自由闊達な表現と阿吽の呼吸とも言うべき絶妙な合わせを成功させた演奏である。
ルービンシュタイン最晩年の滋味あふれるピアノが、清新なシェリングのヴァイオリン、甘やかなフルニエのチェロに寄り添い、ドイツ・ロマン派の最高峰のピアノ三重奏曲6曲に極上の名演を成し遂げている。
音楽家の質自体が高くなっているが故にかえって演奏が小粒に見えてくる現代にあって、こうしたレジェンドスターの大家3人が単なる一時的な協演ではなく本格的に取り組む企画は将来にも滅多に望めるものではないだろう。
個性的な三者それぞれの歌い口の上手さに加えて、巧みな旋律の受け渡しや時にはオーケストラを髣髴とさせるような豪快さなど、アンサンブルの総てのテクニックとその醍醐味が示されている。
ここで表現されているのは中庸の美や老境の渋さというようなものではなく、意外かも知れないが奔放かつドラマティックなブラームス、シューベルト及びシューマンで、それが彼らの円熟期に録音されたことも幸いだった。
いずれにしてもトリオの主導権を握っているのが常にルービンシュタインであることも注目される。
ブラームスとシューマンが1972年、シューベルトが74年にジュネーヴのヴィクトリア・ホールで収録された音源で、ルービンシュタイン85歳から87歳にかけてのトリオだが、その演奏からは枯淡の境地も懐古趣味も感じられない。
特にシューベルトでは朗々として未来に向かって進むような逞しい若々しさに満ちている一方で、成熟したアンサンブル特有の比類ない合わせ技にも不足していない。
シェリングとフルニエはケンプと組んだベートーヴェンのピアノ三重奏曲集でこの時代の決定盤と言うに相応しい録音を遺している。
またルービンシュタインとシェリングはベートーヴェン及びブラームスのヴァイオリン・ソナタ集でも素晴らしいデュエットがある。
こうした気心の知れたソリスト同士が創造する音楽には我を抑制した協調性が滲み出ているのも事実だが、ブラームスでの厳格で隙のない対位法の再現にも彼らの技量が冴えているし、シューマンでは彼の複雑な心理描写よりも、むしろ清冽で瑞々しい曲想が前面に出ている。
CD3枚分の音源がひとつのセットに纏められたのはこの日本盤だけだが、50年にもなろうとする古い音源にも拘らずリマスタリングされた音質は極めて鮮明で、ホールの豊かな音響の中での三者間の位置関係や個性的な音色が良く捉えられている。
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