2018年07月20日

ハイリゲンシュタットで聴いたあの演奏、バーンスタインの弦楽合奏版カルテットUHQCD盤


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バーンスタインのロマンティックな感性がここでも縦横に発揮されたパッショネイトな演奏。

ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲を鑑賞するには、ひとくさりの楽理の知識と精神的な準備がないと、その深遠さに気付くことが困難なことは周知の通りだが、この弦楽合奏版ではそうした下準備を一切必要としないほどダイレクトに聴き手の心に入り込んでくる浸透性と情熱的な包容力がある。

そこにはバーンスタインの音楽を聴かせる作曲家の直感と指揮者としての力量が示されているし、またウィーン・フィル黄金期のストリング・セクションのシックな音色と深呼吸するような振幅の大きいダイナミズムが指揮者の解釈に良く呼応している。

当時のウィーン・フィルは折り合いの悪い指揮者には彼らの演奏姿勢を譲らない頑固で高いプライドを持っていたが、バーンスタインとは常に幸福な共演を果たしている。

このディスクに収録された2曲の弦楽合奏版は、言ってみればベートーヴェンの作品の本筋からはいくらか離れた際物だが、実際に大編成のストリング・オーケストラのサウンドとして鳴り響くと、聴く人の感性に訴えて大きな感動をもたらすことに驚かされる。

それはこれらの作品の普遍性が驚異的な融通性をも持ち合わせていることの証左でもあるだろう。

第16番ヘ長調が1989年ウィーン・ムジークフェライン・グローサーザール、第14番嬰ハ短調が77年ウィーン・コンツェルトハウスでのライヴ・レコーディングだが、客席からの雑音が最小限に抑えられた良好な録音がUHQCD化によって更に鮮明に再生される。

尚弦楽合奏版は既にトスカニーニの時代から演奏されていたようだがアレンジャーは明記されていない。

以下は個人的な思い出。

随分前のことだがウィーンの郊外、ハイリゲンシュタットのベートーヴェン記念館で偶然聴いたのがバーンスタイン、ウィーン・フィルによるこのディスクだった。

10月も終わりの頃、午前中カーレンベルクの丘に登って斜面に広がる葡萄畑やドナウ河畔のウィーンの遠景を見た後、ハイリゲンシュタット公園に降りてベートーヴェンの像の傍らのベンチに腰掛けて、木々の間を素早く走り抜ける野生の栗鼠を見ていた時、前に行ったことのある彼の記念館がごく近くにあることを思い出した。

ベートーヴェンが一時期夏の間借りていた小さな家で、重度の難聴に絶望した彼が自殺を決意して遺書を書いた場所だ。

他に誰も見学者がいなかったので部屋の片隅に装備されていた簡素なオーディオ・コーナーでリラックスしながら何気なく聴き始めたのがこれだった。

弦楽合奏版で鑑賞するのは初めてだったが、この演奏を聴いているうちに、図らずもベートーヴェンの波乱に満ちた生涯が脳裏をよぎって涙を禁じえなかった。

その後ベートーヴェンが礼拝に通っていた近くの聖ヤコブ教会に入った時には暗闇になっていて、ひっそりと静まり返った堂内に点いていた薄暗いランプの下で、さっき聴いた音楽がまだ残響のように鳴っている錯覚に襲われた。

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classicalmusic at 22:59コメント(0)ベートーヴェン | バーンスタイン 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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