2018年07月24日

ブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデンによる初稿版『レオノーレ』


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



ブロムシュテットらしく、いわゆるオペラティックで劇場的な派手さを狙った演奏ではないが、堅実な采配がかえってこの作品の舞台効果を高めていると同時に、手際の良い場面の進行でストーリーにも連続性が保たれている。

ベートーヴェンがシーンを盛り上げる時に歌手の個人的な見せ場のアリアよりも重唱で一人一人の心理描写や葛藤を描く、アンサンブルの音楽的高みを創って緊張感を高めていることが良く理解できる。

名高い囚人のコーラスでも抑制された、しかし力強い男声合唱を聴かせている。

またシュターツカペレ・ドレスデンの飾り気のないオーケストラの音色がこのオペラの文学性と交響的な作風の両面を矛盾することなく表現していて秀逸で、そこにはこの作品に懸ける彼らの強い意気込みが感じられる。

この録音の後、ベルリンの壁が崩壊してからドレスデンのオペラの殿堂ゼンパーオーパーでの彼らの最初の演目も『フィデリオ』で、旧体制からの開放をこのオペラのストーリーになぞらえて、苦しみの末に勝ち得た人類愛と歓喜を上演に託している。

このディスクに収録されているのは初稿なので、現在では牢獄のシーンの後に習慣的に挿入される序曲『レオノーレ』第3番はここでは演奏されない。

ブロムシュテットの抜擢した歌手陣もそれぞれが実力派で、エッダ・モーザーの知的な歌唱はヒロイン、レオノーレの毅然とした性格を良く表している。

ただし第11番のシーンでは後半やや力み気味になっているのが惜しまれる。

ベートーヴェンは発声の生理的メカニズムを活かすメロディーというより、どちらかと言えば器楽的な作法をとっているので実際声楽曲として歌い切ることには困難があるに違いない。

テノールのリチャード・カシリーは超美声というわけではないが、発声が柔軟で力任せに歌うタイプではないために、変化する心理描写が欠かせないフロレスタンには適役だ。

数年前、ウィーン・シュターツオーパーで『フィデリオ』が上演された時、絶叫するテノールに辟易した思い出がある。

刑務所長ドン・ピツァロ役のテオ・アダムも性格俳優さながら安定した歌唱で脇を固めている。

1976年ドレスデン・ルカ教会でのセッション録音で、音質は極めて良好。

ブリリアントからのバジェット盤でシノプシスは掲載されているが、リブレットは省略されている。

ベートーヴェンの唯一のオペラ『フィデリオ』は、彼の命名では原作の戯曲と同様の『レオノーレ』だったが、初演の失敗や既に存在していた同名の作品との混同を避けるため主人公レオノーレの仮名フィデリオで上演されるようになった。

ブロムシュテットが採用したのはベートーヴェンが1805年にひとまず書き終えた初稿版で、セリフ付オペラ・コミク様式の3幕仕立てで構成されている。

冒頭に置かれた序曲は現在『レオノーレ』第2番と言われているものだが、初演のために用意されたオリジナル作品で、劇中のモチーフを取り入れた舞台の情景を暗示させる充実した内容を持っている。

序曲『レオノーレ』第1番は実際には1806年に第2稿として作曲されたもので、更に同第3番を1807年のプラハ初演の機会に、そしてオペラのモチーフを全く欠いたフィデリオ序曲を1814年に書いている。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 21:15コメント(0)ベートーヴェン | ブロムシュテット 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ