2018年08月07日
コダーイのさまざまなジャンルの作品を一通り俯瞰できるアルバム
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伝統的なハンガリーの民族音楽を現代に活かして再生する試みは、20世紀の初頭に僚友バルトークと共に決定的な時代を迎えたが、それは彼らの祖国の音楽芸術にとって全く幸運なピリオドだったと言えるだろう。
この2枚組のCDセットにはコダーイのさまざまなジャンルの作品を一通り俯瞰できるように曲目がカップリングされている。
管弦楽曲では同名のオペラから再編成された組曲『ハーリ・ヤーノシュ』が彼の代表作でもある。
ここでは彼の作曲の基礎になっている民族音楽のエレメントだけでなく、民族楽器ツィンバロムを取り入れてエキゾチックで独特の雰囲気を醸し出している。
テンシュテット指揮、ロンドン・フィルの1983年の演奏は、セル以来の名演で、聴いていると、ふと笑いがこみあげてくるような演奏である。
いくらか洗練されすぎている嫌いがないわけでもないが、土の薫りの代わりに華やかなオーケストレーションの面白みと統率された精緻で巧みな表現を聴かせてくれる。
テンシュテットは、やや遅めのテンポをとりながら、ここでは、きわめて複雑に入り組んだオーケストレーションを、実に巧みにまとめあげており、さまざまな楽器が織り成す親しみやすい旋律を、よく歌わせている。
ゆっくりとしたテンポで抒情的に流した「歌」や、全合奏とトランペットのコントラストの絶妙な「戦争とナポレオンの敗北」などは、ことに優れた演奏だ。
録音もすこぶるよく、管楽器のソロなどは、特に鮮明に収録されている。
オルガン付の神秘的な『ミサ・ブレヴィス』は、ステフェン・クレオバリー指揮、キングス・カレッジ・コーラスの1987年のセッションで、コダーイが宗教曲でも優れた腕を示したことを証明している。
2枚目では少女合唱のための7つのコーラスがとりわけ鮮烈で美しい。
殆んどの曲がア・カペラで歌われ、繊細なガラス細工のような透明な響きの中に、ハンガリー語のアクセントを活かしたリズム感が特有の精彩を与えている。
少女合唱の曲としては技術的にかなり難曲と思われるが、コダーイ少女合唱団は良く訓練された鮮烈な響きを生み出していて秀逸。
器楽曲ではダヴィッド・オイストラフのヴァイオリン、ヴラディミル・ヤンポルスキーのピアノ伴奏による『3つのハンガリー民謡』は、多くのヴァイオリニストが手がけるポピュラーな小品だが、彼の演奏は線の太い逞しい演奏で、テクニックの冴えも完璧だ。
1956年のモノラル録音で音質は良好。
最後にコダーイの代表曲のひとつ『無伴奏チェロのためのソナタ』をポール・トルトゥリエの演奏で収めている。
個人的にはシュタルケルのものがその集中力と一切の無駄を省いた表現力と気迫で優っていると思うが、トルトゥリエのチェロには独特の色彩感があり好感が持てる。
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