2018年08月15日

歴史に繰り返されるバロックの思想


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本書は2001年に出版された単行本の文庫版で、ルネサンス、マニエリズム、ロココそしてバロックという美術史の流れを通して、バロック芸術の占める位置関係を明らかにしながら数多くの作品例を引用してその特徴や傾向、並びに意義が読み解かれていく。

パリのポンピドゥー・センターの建築から始まる本書は、西洋美術史研究の第一人者が、音楽や建築にとどまらず、美術、演劇、文学にまで及ぶ多彩な分野を、さまざまな時代にわたって縦横無尽に駆けめぐりながら、バロックの本質に迫っていく魅惑の旅の記録である。

もともと「歪んだ真珠」、「いびつな真珠」を意味する形容詞として生まれた「バロック」という言葉は、「粗野な」、「劣った」、「価値の低い」というニュアンスを帯びて使われるようになった。

しかし、その一方で、バッハに代表される「バロック音楽」や、サン・ピエトロ大聖堂前の広場に見られる列柱廊に代表される「バロック建築」など、雄大にして壮麗な作品群が「バロック」の名で呼ばれてもいる。

ジャンルとしての「バロック」でもなく、時代区分としての「バロック」でもなく、現代にまで至る全時代に見て取られるものとしての「バロック」を、無数の作品を渉猟しながら求めていった先には、現代こそバロックの時代である、という事実が浮かび上がる。

勿論著者は当時の政治的、また社会的な背景も疎かにしていない。

特にバロック時代の始まりは、マルティン・ルターによってもたらされたプロテスタント側の宗教改革と、逆にカトリック側が巻き返しを図った対抗宗教改革の時代とまさに一致している。

カトリック教会は自らの権威を誇示するような壮麗な芸術を奨励し、より多くの信者の獲得とその支持を得んがためアーティストに万人が理解できる平易な作品を要求した。

冒頭に書かれている現代のハリウッド映画とバロック芸術の類似性の比喩は言い得て妙だ。

つまり大金をかけ、スターを起用して派手な演出だが誰にでも理解できる単純な勧善懲悪の筋立ての映画を作り、不特定多数の観客を魅了し、感化させる。

確かにそうした大衆性がこの時代の芸術の性格を端的に物語っていると言えるだろう。

その意味では著者が書いているように、バロックの思想は歴史を追って現代まで何度も繰り返されている。

だがこの時代の多くの天才達がそのような思想的な枷やジャンルを遥かに超越した総合芸術を創造することに成功したのも紛れもない事実だ。

高階氏の文章は常に平明で、要領を得た無理のない表現が特徴だが、欲を言えば掲載写真をカラーにして欲しかった。

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classicalmusic at 21:00コメント(0)芸術に寄す  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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