2018年09月08日
フルトヴェングラー、EMI音源のバジェット・ボックス第2集はブラームス
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ワーナーでは昨年フルトヴェングラーのベートーヴェン交響曲全集のバジェット・ボックスをリリースして、それまで決してリーズナブルとは言えなかったEMI音源の個別売りやセット物がひとつに纏められた。
これはその第2集に当たり、ブラームスの4曲の交響曲及び3曲の協奏曲の他にハイドンの主題による変奏曲、ハンガリー舞曲集と『ドイツ・レクイエム』を6枚のCDに収録している。
ブラームスの音楽は、古典的な特質に重点を置くか、それともロマン的な特質を重視するかで表現がかなり違ったものとなるが、基本的な解釈を充分抑えた上で自在な感興に任せつつ、うねるように感情豊かな音楽を繰り出していくフルトヴェングラーの自在な棒は、ブラームスのロマン的な面に重心を置いたものと言えよう。
聴きどころはSACD用DSDリマスタリングによってどれだけ音質が改善されたかで、廉価盤ということもあってそれほど期待していなかったが、概ね良好なサウンドが再生される。
当然晩年のウィーン・フィルとの共演の方が音質が良く、当時のコンサート・マスター、ボスコフスキーやブラベッツのソロを始め往年の名首席達、レズニチェック、カメシュ、ウラッハなどのアンサンブルに間接的に触れることができるのも幸いだ。
交響曲はフルトヴェングラーの戦後のライヴを集めた全集で、第1番のみウィーン・フィル、あとの3曲は手兵ベルリン・フィル。
第1番のスケール感と劇的起伏に満ちた迫力、第2番での自由な精神の飛翔、第3番における取り憑かれたような感情の激動、第4番の内と外への雄渾な広がり、と音楽の深部にまでのめり込んでの鬼気迫る名演である。
戦中のライヴになるエドヴィン・フィッシャーとのピアノ協奏曲第2番は思ったよりまともな音が保たれている。
ルツェルンとの音源は、メニューインを迎えたヴァイオリン協奏曲が2人のカリスマ性が火花を散らす魅力的な演奏だが、第1楽章の長いカデンツァは今となってはややくどい印象を否めない。
一方保存状態が好ましくないストックホルム・フィルとの『ドイツ・レクイエム』に関しては、お世辞にも良好とは言えないが、これらは別物のマスターでも発見されない限り、これ以上の音質改善は望めないだろう。
むしろ現在となっては、片っ端からSACDや高音質CDに焼き直して価格を吊り上げるより、先ずレギュラー・フォーマットのCDで気軽にフルトヴェングラーの名演に触れることの方が先決だと思う。
勿論フルトヴェングラーのファンであれば立派なコレクションとしての価値を持ったセットだ。
尚それぞれのCDにオリジナル・カバー・デザインが使用され、ライナー・ノーツにはフランスのクラシック・ジャーナリスト、ユーグ・ムソーによる新規の欧文エッセイが掲載されているが、録音データに関してはウォリット裏面にしか印刷されていない。
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