2018年09月10日
ヨッフム、グラモフォン音源集大成の第1集
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オイゲン・ヨッフム(1902-1987)がドイツ・グラモフォンに録音した総ての音源を集大成する企画で、この第1集はオーケストラル・ワークスの42枚組になり、第2集にはオペラ、声楽曲等が組み込まれることになるようだ。
ヨッフムは質実剛健で堅実な指揮をした典型的なドイツの巨匠で、作品に対する徹底した楽理的な分析に裏付けられた飾り気のない実直な再現を信条としていた。
彼のスタイルはドイツ的とよく称されるが、それは、中央ヨーロッパの、落ち着いた色合いの響きから、奥行きの深い、しかし溶け合ったサウンドを引き出し、ここぞという所では勇壮な迫力を導いたことを表している。
一方でヨッフムはオーケストラのインストラクターとしての実力も高く評価されている。
何故なら彼はヨーロッパの幾つかの楽団、例えばバイエルン放送響、コンセルトヘボウ、バンベルクなどの窮状を救った功績が広く認められているからだ。
揺るぎない基礎から積み上げていく堅牢な音響は特にブルックナー、ブラームス、ベートーヴェン、ハイドンの交響曲に顕著で、細部までぶれのないまとめ方をするが、むやみにスケールを強調して作品を誇大に見せたり、聞こえよがしの演出的効果などは嫌っていた。
このセットでもほぼ半数のCDがこれらの作曲家の交響曲で占められており、この指揮者の手腕が発揮された、当時の最も良質な音楽芸術が記録されたものだと考えられる。
ヨッフムの多くの功績の中でも特筆すべきはブルックナー作品の啓発で、自身も国際ブルックナー協会の会長を務めながら、世界各地で多くのオーケストラを振って、その交響曲を演奏した。
彼の指揮スタイル全般に言えることだが、テンポの揺らしが大きいロマン的でスケールの大きい表現が特徴で、おそらくフルトヴェングラーの影響があったのだろう。
当時のベルリン・フィルにも、そのような表現方法が染みついていたのではないだろうか。
それにしても、当時あまり取り上げられる機会の少なかったブルックナーの第1、第2、第6交響曲といった渋い作品にも、強い共鳴と共感から、実に情熱的で美しい演奏が繰り広げられている点は、見逃せない当全集の価値だろう。
ブルックナーに関して言えば、後年の深いアダージョの表現などは、EMIのシュターツカペレ・ドレスデンとの録音に更なる深みを感じさせるところもあるが、全体的な前進性、野趣性、それらを踏まえたドイツ音楽らしい雄渾な迫力に満ちている点で、この旧全集は見事なものだと思う。
そういった意味で、今尚聴き劣りのしない、現役の名演として、指折るべき全集として、このブルックナーは記録以上の価値を有している。
また、ベートーヴェンの全集については、長らく入手が困難だったもので、当企画による復刻は歓迎される。
モノラル録音を含むが、第9番などを聴くと、モノラル末期の録音品質がここまで向上していたのだと改めて気づかされるほどの内容だ。
尚最後のベートーヴェンの2曲のピアノ協奏曲は、ベームの死によって完成されなかったポリーニ、ウィーン・フィルとの全集を補填したものになる。
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