2018年09月22日
ドイツの特性を培った歴史と宗教及び地理的条件
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中世ドイツの研究では第一人者だった阿部謹也氏によるドイツ史の専門的な俯瞰で、ドイツの誕生から今日にいたる歴史に、「ドイツ的」とは何かを思索する、通史とは一味も二味も異なった魅力を持った一冊。
この作品を読んでいると現在のドイツ的国民性や彼らの思考回路を理解するためには、彼らの辿ったかなり複雑な歴史的経過を知らなければならないことを痛感する。
ヨーロッパの中央に位置し古来からゲルマンの他にもケルト、ユダヤ、スラヴ、ラテン系などの民族がひしめいていたドイツでは、ナチスのアーリア人優越論も実際には存在しない唯一のドイツ民族というでっち上げだったことも容易に理解できる。
大洋に開けた港を持っていなかった宿命的な地理的条件から大航海時代に海外に植民地を得ることも逸したし、彼らが現在に至るまで連邦という統治形式を残している理由も自ずと見えてくる。
1815年にドイツ連邦が成立した時にはオーストリア、プロイセンの他4王国、1選挙侯国、7大公国、10候国、10公国、1方伯国、4自由都市の実に39の主権国と都市の連合で、それぞれが異なった貨幣と関税制度を持って頑固なまでにお互いの利害関係に固執していたことから、対外通商においても困難を極めていたようだ。
また戦後分かれた東西ドイツも単にソヴィエトと西側の戦勝国の間での線引きではなかったことも象徴的だ。
その国境線は中世以来社会的にも経済的にも対立していた地域で、東側の社会主義体制も敗戦後に突然生まれたものではなく、西欧の歴史に根ざして育っていったという著者の説明には説得力がある。
ベルリンの壁が偶発的に崩壊したのとは裏腹に、東西両ドイツの実質的かつ完全な統一が困難であったということは当然だろうし、いまだに多くの問題を抱えているのも事実だ。
また本書は1998年に初版が出ているが、阿部氏はアジールの研究から、既に将来移民や難民が重要な社会問題になることを指摘している。
本論の間に挿入されている間奏曲と題したコラムの部分では通史では学習できない、歴史という結果に至るまでのさまざまな経緯やエピソードが解説されていて、更に教養を深めてくれる。
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