2018年09月14日
リラックスのひと時に、スークの名演復活
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先ず廃盤になって久しかったこのCDの廉価盤化での復活を歓迎したい。
ヨゼフ・スークが60歳を迎えた1990年のセッションで、ピアノ伴奏はヨゼフ・ハーラ。
彼らはこのほかにも幾つかのアンコール・ピースを録音していて、そちらの復刻も望まれるが、何と言ってもスークの愛用する名器ストラディヴァリの明るく甘美な音色をフルに活かした歌心に溢れる表現が最大の聴き所だ。
必ずしも有名な曲ばかりを集めず程良く隠れ名品を交えており、曲順も変化に富み退屈にならないよう良く考えられている。
それぞれの曲の規模が小さいだけに、ヴァイオリンの魅力のエッセンスが堪能できる1枚。
スークが今の世に“歌う楽器ヴァイオリン”の真髄を示し得る巨匠であることを、この演奏は教えてくれる。
甘美な抒情を歌い上げた曲が並んでも聴き飽きないのは、スークが歌の機微を心得ているからだ。
ファリャのスペイン民謡組曲〜ホタのような強い性格の曲でも、作品に込められた情熱を直接的な音響効果として表現するのではなく、響きとしては穏やかでありながら音楽の心を聴かせる。
決して今風ではないかもしれないが、大切にしたいものである。
スークはかつてエルマンやグリュミオーが誇っていたような、聴けば即座にそれと判る彼独自の音色を持っている。
彼らのように磨き上げられた音色を武器にするヴァイオリン奏者は、いきおい曲の解釈自体も耽美的な傾向になりがちだが、スークには特有の現代的に洗練されたセンスがあって、必要以上にポルタメントをかけたり、曲想をことさら大袈裟に仕上げたりすることがないのは好ましい。
また彼の演奏には常に人間的な温かみが感じられ、音楽の喜びをダイレクトに伝えてくれる。
抑制の効いたハーラのきめ細かい伴奏もソロを引き立てた好サポートだ。
このCDに収められた20曲の小品の多くは、ヴァイオリンとピアノ伴奏の為にアレンジされた編曲物で、ヴァイオリニストの為のスタンダード・ナンバーといったところだが、意外にも一流奏者の新しい録音が少ない。
確かに協奏曲やソナタ、あるいは無伴奏などの大曲に取り組まなければならない若手にとって、こうしたきわもの的な音楽は録音の対象外になってしまうのだろう。
若くしてこのジャンルに積極的に手を染めたのは、サービス精神旺盛なパールマンくらいだが、大家の演奏で聴く小品はとりわけ深い味わいがあり、リラックスのひと時に心を和ませてくれる。
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