2018年10月04日
ザンデルリンク、シュトゥットガルト放送によるブルックナー第7番ライヴ
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クルト・ザンデルリンク(1912-2011)は、晩年ヨーロッパの名門オーケストラだけでなく、中堅を支えるいくつかの実力派の楽団にも頻繁に客演したが、シュトゥットガルト放送交響楽団とも質の高い演奏を遺してくれた。
そのひとつが1999年12月に地元リーダーハレで行われたこのディジタル・ライヴになる。
演奏終了後の歓声と拍手の他には幸い客席からの雑音は殆んどなく、またブルックナーには不可欠なホールの潤沢な残響や空気感にも不足しない良好な録音状態にも好感が持てるし、CDの音質や臨場感も極めて良好だ。
独SWRの制作によるディスクのリニューアル盤で、ジャケットの写真を一新して今年再販された。
当時の西側に彼の名が知られたのが遅かったためか、大手メーカーからザンデルリンクにブルックナーの交響曲の全曲録音の企画は持ち込まれなかった。
この他にはベルリン放送交響楽団、コンセルトヘボウ、BBCノーザン、ゲヴァントハウスそれぞれとの第3番とバイエルン放送交響楽団との第4番『ロマンティック』などがレパートリーとして挙げられる程度だ。
いずれも彼の大曲に対する知的なアプローチが作品の構成を堅固に聴かせるだけでなく、同時にライヴならではの白熱した雰囲気も伝わってくる。
この晩年の第7番は、優しく、時に力強いザンデルリンクの良さが十二分に発揮された名演中の名演である。
ザンデルリンクならではの慈愛に満ちたブルックナーで、いつものように丁寧に1つ1つの音を作り上げていくが、そういう音楽に対して謙虚な姿勢が感じられる一方で、音は確固たる自信にあふれている。
とりわけ第2楽章は、人間の奥底にある穏やかな感情を静かに描いているように感じられる。
かつての日本盤解説では「何があってもびくともしない」と評されていたがその通りで、その安定感が聴き手に対し、大樹に寄り添うような安心感を与えてくれるのだろう。
2012年に統廃合が行われた結果、現在では南西ドイツ放送交響楽団の名称で呼ばれているシュトゥットガルト放送交響楽団だが、確かにオーケストラとしての完成度から言えば彼らを上回る楽団は少なくないだろう。
しかしこのブルックナーではザンデルリンクの悠揚迫らざるテンポの中に、幅広いダイナミズムを巧みにコントロールした采配に呼応する、高度な合奏力を持ったオーケストラであることが証明されている。
むしろ超一流のオーケストラではそれほど顧みられない作曲家の朴訥とした作風を滲み出させているところも秀逸で、こうした表現に関してはドイツの地方オーケストラがかえってその実力を示しているのは皮肉だ。
例えば第2楽章後半の壮麗なクライマックスを聴いていると、ノヴァーク版のシンバルが如何にあざとく煩わしいものかが理解できる。
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