2018年10月09日
ブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデンによる精妙な『ツァラトゥストラ』『ドン・ファン』
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このディスクにはヘルベルト・ブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンによるリヒャルト・シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』及び『ドン・ファン』の2曲が収録されている。
どちらも1987年にドレスデン、ルカ教会でのPCMディジタル録音だが、ライナー・ノーツによると前者のオルガン・パートはベルリンのシャウシュピールハウスでの演奏がシンクロナイズされたようだ。
制作は日本コロムビアとドイツ・シャルプラッテンのコラボで、この頃には既に16ビット4チャンネルの録音機が導入されていたこともあり、今回のUHQCD化によって彼らの精妙な演奏が鮮明な音質で再生される。
ブロムシュテットとシュターツカペレ・ドレスデンは『マクベス』を除く6曲のR.シュトラウスの交響詩を3期に分けて録音したが、今回の企画でその総てがUHQCD化されたことになる。
オーケストラの音の伸びも自然で、ルカ教会の高い音響空間を活かしたクリアーな空気感の中に拡散する奥行きのあるサウンドが特徴だ。
『ツァラトゥストラ』はR.シュトラウス特有の絢爛豪華なオーケストレーションが駆使されている性格上、華美になり過ぎると曲想が上滑りして強烈な冒頭部分のみが突出して、残りの部分の影が薄くなりがちだ。
ここではブロムシュテットの全曲を見極めた均整のとれた造形が、9部分から構成されるストーリーの結束を固くして、最後まで聴き手の注意を逸らせない。
音響の壮大なドラマに重点を置かずに1つ1つの音符を誠実に再現し、その結果として自然に堂々とした風格が出てきた表現と言うべき特色を持っている。
最後の部分に現れるヴァイオリン・ソロを始めとするソロやアンサンブルも洗練されていて、シュターツカペレ・ドレスデンの伝統的な奏法といぶし銀の音色が、指揮者の音楽的構想を可能にしていると言ってもいいだろう。
『ドン・ファン』でも華やかでドラマティックな曲想にシックな趣が加わって、文学的な高尚さを醸し出している。
ここでの主人公はモーツァルトの描いた、人間の業の権化のようなドン・ジョヴァンニ像とは性格を異にする、R.シュトラウスによって理想化された人物として表されている。
2曲ともに、ブロムシュテットの落ち着いた語り口と真摯で丁寧な表現が、シュターツカペレ・ドレスデンの中欧的な柔らかい響きの魅力を旨く活かす結果になった演奏で、オーケストラの機能美ばかりが追求されるR.シュトラウスの演奏に一石を投じる解釈と言える。
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