2018年10月11日

厚化粧を避けた風通しの良いメンデルスゾーン


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クラウディオ・アバドが1984年に当時の手兵ロンドン交響楽団と取り組んだメンデルスゾーンの交響曲全集で、彼の円熟した棒さばきが冴え、全体にすっきりとまとまった快演だ。

アバドは欧米のオーケストラにイタリア的な新風を吹き込んだ指揮者であることは誰しも認めるところだが、それは先輩ジュリー二の孤高の至芸に比べれば更に徹底したものだった。

この傾向は図らずもムーティによって受け継がれることになるが、それには先ずオーケストラからの音のベクトルの転換というストラテジーがある。

端的に言えば伝統的なオーケストラには特有の個性や芸風が培われていて、それが長所にもまた場合によっては枷にもなるわけだが、その枷の部分を取り払うことによってオーケストラを一度解放し、楽員の自発性を発揮させながら新たに全体をまとめていくというのがアバドの戦法だ。

特にメンデルスゾーンのように天性の平明さを持った屈託のない音楽には理詰めの厚化粧より、むしろ風通しの良いフレッシュな感性と開放感の表出がより適しているだろう。

そうした意味でこのメンデルスゾーンの交響曲全集では彼らによって最良の効果が発揮されている演奏だ。

少なくともオーケストラの自主性が良く表れていて、ロンドン交響楽団の音色も彼の指揮の下では何時になく明るく軽快に聴こえるのも偶然ではないだろう。

しかも彼らが伝統的に持っている凛とした気品は少しも失われていない。

メンデルスゾーンの交響曲は構成がきちんとしていて、展開がわかりやすい。

その分抽象的な印象を与えるが、クレンペラーのような指揮者なら、それを神秘感あふれる雰囲気に変えることができる。

しかしアバドはその北方的な雰囲気を、ラファエロの精妙かつ豊麗な、あたたか味ある色合いに転調し、絹のような艶と光沢を帯びた響きの世界を生み出している。

交響曲第3番『スコットランド』ではカラッとして涼しげなカンタービレが、この曲の持つ陰鬱なイメージにはそれほど似つかわしくないかも知れないが、アバドは徹底した譜読みと気の利いた音楽的アイデアを感知させていて強い説得力がある。

一方交響曲第4番『イタリア』は彼のアプローチが最大限活かされた曲目で、イタリア出身のアバドが名実共に爛ぅ織螢△良瓩鯑わせる。

とはいえ、カラリとした空気とは違い、シンフォニックで潤いのある響きと、十全な歌わせ方は濃密なロマンティシズムを漲らせ、アバドがもはやロンドン交響楽団に自らを同化させているのを痛感させる。

特に終楽章「サルタレッロ」はイタリア中部の民族舞踏を取り入れた5分余りの短い曲だが、その熱狂的なスピード感と同時に高度に洗練された趣味が聴きどころだ。

玄人好みの第5番『宗教改革』にしても、メンデルスゾーン特有のリリカルだが狃世吻瓮ーケストレーションの妙味が際立っているのが心憎い。

宗教的な敬虔さとメッセージ性を直截に表わす表現も同様で、メンデルスゾーン音楽の精髄を衝く演奏だ。

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classicalmusic at 00:12コメント(0)メンデルスゾーン | アバド 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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