2018年10月13日
UHQCD化されたブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデンによるR.シュトラウス交響詩集完結編
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R.シュトラウスの交響詩集は密接に文学やそのストーリーに結び付けた音楽と言うより、文学作品から受けたイメージを洗練されたオーケストレーションによって発展させ、結果的にはタイトルの如何に拘らず、独自の音楽的なインスピレーションとアイデアを披露する場になっているので、物語との整合性を求めてもあまり意味がないだろう。
このディスクに収録された『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』も原作の卑近で尾籠な話の中に鋭い風刺を織り込んだ笑話集とはかなり印象の異なった、高度な音楽性と趣味の良いシュトラウス=サウンドがブロムシュテットの端正で的確な指揮ぶりと美しく充実したシュターツカペレ・ドレスデンによって理想的に再現されている。
風刺的表現に関してはむしろ後退しているが、純粋な管弦楽曲としての完成度の高さは流石と思わせるものがある。
勿論、当時の首席ホルン奏者だったペーター・ダムの軽妙なソロも聴きどころのひとつだ。
『メタモルフォーゼン』は交響詩とは名付けられていない弦楽のための作品だが、大戦によって失われた芸術への追悼がブロムシュテットの強い共感と共に鮮烈に表現され、晩年の作曲家の黄昏に佇むような心境を偲ばせるものがある。
3曲目の交響詩『死と変容』でもシュターツカペレ・ドレスデンの首席奏者達の巧みなソロとアンサンブルが秀逸で、改めてこの楽団の水準の高さを知らされる。
ブロムシュテットは強い個性を主張する指揮者というよりは、むしろ作曲家の構想をスコアから隈なく読み取るタイプなので、R.シュトラウスの精緻なオーケストレーションが淀みなく整然と描かれているところが彼らの一連の演奏集の特徴だろう。
その上でシュターツカペレ・ドレスデンはR.シュトラウスの9曲のオペラを初演し、アルプス交響曲を献呈された、作曲家に最も信頼されていたオーケストラだったこともあり、団員達の伝統的な解釈が演奏に反映され、他のオーケストラとは一線を画しているのも事実だろう。
R.シュトラウスのオーケストラル・ワークに関してはブロムシュテットより6代前のカペルマイスター、ルドルフ・ケンペとの1970年代初期のCD9枚分の網羅的な録音集が歴史的名演として知られたところだ。
ブロムシュテットはケンペほど徹底した管弦楽曲集は残さなかったにしても『英雄の生涯』を手始めに『ツァラトゥストラ』、『ドン・ファン』、そして『ティル』『メタモルフォーゼン』及び『死と変容』の6曲を3期に亘って録音した。
このディスクの3曲はシリーズ最後の時期に当たる1989年にドレスデン・ルカ教会で行われたセッションになる。
奇しくも東西ドイツ統合の数ヶ月前の録音だが、この頃既に東側ではPCMディジタル録音が一般化していたために音源は極めて良好で、グレードアップされたリニューアル盤が待たれていただけに今回のUHQCD化はタイムリーな企画だ。
これで、ブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデンによる6曲の管弦楽曲集の高音質盤が完結したことになる。
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