2018年10月17日

気品に満ちた奥深いピアノ・トリオ集


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この5枚組のピアノ・トリオ集は1997年にドイツ・グラモフォンから刊行されたコンプリート・ベートーヴェン・エディションのためにリマスタリングされて、その第9巻として組み込まれた。

当エディション自体廃盤になって久しいが、2013年同レーベルから簡略化再編集されたマスター・ワーク集がリリースされ、その中では再びこの音源を復活させている。

ただし割り当てられたCDは3枚で、ケンプ、シェリング、フルニエのメンバーによるトリオ変ホ長調WoO38や『私は仕立て屋カカドゥ』からのヴァリエーション他数曲が選曲から漏れている。

いずれにしても録音から40年以上経過した現在でもこのセッションの普遍的な価値が評価されている証左で、実際彼らの演奏水準の高さから言っても単独でリイシューされるべき名盤の範疇に入るものと思う。

尚このセットのうちCD1枚強はボザール・トリオその他の演奏者によるベートーヴェン自身のピアノ・トリオ用編曲作品集になる。

いずれもケンプ、シェリング及びフルニエの三者の気負いのない、しかし極めて真摯かつ流麗な演奏が美しい。

こうした個性の強いベテラン演奏家のアンサンブルでは、どこまで協調してそれぞれが目指す音楽的な理想に近づけるかがキー・ポイントになるが、ここでは彼らがお互いのコンセプトを尊重しつつ、また合わせ技においても傑出していたことを明らかにしている。

何よりもベートーヴェンの音楽を整然とした秩序の中に再現し、そこに深いロマン性を秘めているところが秀逸だ。

情熱的な表現と言うよりむしろ淡々と語りかけてくるような趣があり、聴くほどに深い味わいがある。

3人の中でリーダーシップを掌握しているのはピアノのケンプだろう。

彼は扇の要のようにトリオを完璧に支えるだけでなく、巧みにコントロールされたピアノの清澄な響きの中にヴァイオリンとチェロを大らかに歌わせるテクニックが素晴らしい。

大曲『大公』ではシェリングの知性とフルニエの高貴が相俟って、老獪とも言える余裕と自由闊達さで音楽的な調和を完全に維持しながら、驚くほど奥行きのある表現力を示してベートーヴェンの哲学的な深みをも汲み尽したセッションだ。

ちなみにシェリングに代わってクラリネットのカール・ライスターが加わるトリオ『街の歌』は、このセットではなく第14巻の室内楽曲集6枚組の方に収められている。

ブックレットは写真、図版入りで79ページあり、曲目及び録音データの他に英、独、仏語による解説と、更にイタリア語とスペイン語の別冊ライナー・ノーツも添付されている。

音質もきわめて良好で、当時このエディションに賭けたグラモフォンの意気込みが感じられる。

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classicalmusic at 00:06コメント(0)ケンプ | フルニエ 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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