2018年10月25日
ブロムシュテット、モーツァルト晩年の熟成と陰影を表現しきった懐の深い名演
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日本でもおなじみの名匠ブロムシュテットと400年を越える伝統を誇るシュターツカペレ・ドレスデンという燻し銀コンビによる美しく香り高い名演。
ブロムシュテットはかつての手兵シュターツカペレ・ドレスデンとモーツァルトの最後を飾る4曲の交響曲を録音した。
そのうち第40番ト短調及び第41番ハ長調『ジュピター』も、既にもう1枚のディスクでUHQCD化されている。
この2曲も1982年にドレスデン・ルカ教会でディジタル録音された音源で、当時の日本コロムビアとドイツ・シャルプラッテンの共同制作になる。
音質は初期のディジタル録音よりかなり向上していて、それ以前のグランド・オーケストラを使ったスタイルによるモーツァルトでは沈みがちだったウィンド・セクションも立体的な音像で再生される。
潤沢な残響を持った録音会場だがサウンドに混濁はなく臨場感も充分に出ていて、シュターツカペレ・ドレスデンの伝統的な奏法や音色の特徴を捉えることにも成功している。
この時代のエンジニア達のレコーディングに懸けた意気込みを伝えた録音のひとつでUHQCD化はタイムリーな企画だ。
交響曲第38番ニ長調『プラハ』はプラハ初演を念頭において書かれたためか、ウィーンの聴衆には欠かせなかった第3楽章のメヌエットを省いている。
ベートーヴェンは早くからメヌエットをやめてスケルツォを挿入したが、やはり様式にはそれほど固執しない柔軟な感覚を持っていたモーツァルトの一面を見る思いがする。
しかし第1楽章には見事な対位法が使われていて、彼の晩年の自在な作曲法の境地を示している。
ブロムシュテットはそれぞれの声部をダイナミックに聴かせて巧妙なオーケストレーションを堪能させてくれる。
第39番変ホ長調でも彼らは愚直なほどスコアに真正直な演奏をする。
そこに洒落っ気こそ感じられないが、剛毅な力強さに溢れていて、シュターツカペレ・ドレスデンの底力をみせた演奏に違いない。
もっと軽快で輝かしいモーツァルトもあるが、現在これだけ真摯な解釈でしかも高貴な雰囲気を湛えた重厚な再現に出会うことは珍しい。
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