2018年11月14日
ストラディによるアンサンブルの醍醐味、ビルスマの室内楽曲集
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この9枚組ではアンナー・ビルスマ率いるラルキブデッリ及びスミソニアン・チャンバー・プレイヤーズとの共演で古典派から初期ロマン派にかけてのバラエティーに富んだ選曲の室内楽を楽しむことができる。
中でもCD1、4、5、6、そして8はストラディヴァリウス・オン・パレードとも言える楽器編成が圧巻で、殆んどの奏者がこのバロックの名器を引っ提げた典雅な演奏の醍醐味を味わうことができる。
ライナー・ノーツによればこれらの楽器はスミソニアン学術協会のコレクションからの貸与で、ふくよかで明るい響きが重ね合わさる贅沢なアンサンブルは滅多に聴くことができない貴重なサンプルでもある。
名高い「ボッケリーニのメヌエット」が含まれる同作曲家の『弦楽五重奏曲ホ長調』の精緻な合わせ技と高い音楽性を示した彼らの表現は、この作品の価値の蘇生を試みた演奏とも言えるだろう。
また同ニ長調『鳥籠』での小鳥の囀りや第2楽章「羊飼いと狩人」の狩猟ホルンの模倣も巧みで聴き手を理屈抜きで楽しませてくれる。
幸いアマゾンのページのイメージ欄で収録曲目全曲を参考にできるが、CD3のモーツァルトの『弦楽五重奏曲ト短調』は古典的な節度を保ちながら、急速楽章と幻想豊かなふたつの中間楽章との鮮やかな対比が美しい。
CD6でのオンスロウの3曲の『弦楽五重奏曲』では新時代の息吹きを感じさせるようなドラマティックで大胆な解釈が秀逸だ。
CD8のメンデルスゾーンの『弦楽八重奏曲変ホ長調』は作曲者16歳の作品でもあり、その天才的な閃きとフレッシュな感性を漲らせた若々しい表現が活かされていて、終楽章プレストの軽快な追い込みも見事だ。
またニルス・ゲーゼの『弦楽八重奏曲ヘ長調』は、しばしば前者とカップリングされる優れた作品で一聴の価値があるが、ここでも混成メンバーの息の合った合奏が聴きどころだ。
尚CD9は「チェロとプロイセンの王」と題された一種のアンコール・ピース集で、ビルスマが名人芸を発揮して気の利いた1枚に仕上がっている。
ビルスマの主催するピリオド・アンサンブル、ラルキブデッリの名称は直訳すれば腸弦を張った弦楽器のことで、彼らは現代のナイロン製や金属弦ではなく伝統的な羊腸弦、つまりガット弦を使った文字通りピリオド楽器とピリオド奏法による演奏を披露している。
現在の古楽では主流になっているこうしたアンサンブルの演奏形態もビルスマや同時代の演奏家によって復元されたと言っても過言ではないだろう。
羊腸弦は金属弦に比較して温度や湿度の影響を受け易く、演奏中にも微妙な音程の変化をきたすので、演奏者は常に調弦を心掛けねばならないが、その音色は明らかに作品が成立した時代の空気感を伝えている。
またいわゆる古楽に限らずここに収められたロマン派の音楽にとっても決して異質な印象はなく、曲想に適った奏法によって最良の効果が上がることを証明している。
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