2018年11月20日
18歳のポリーニが弾いたショパン・エチュード全曲集
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
ポリーニのエチュードと言えば1972年のドイツ・グラモフォン盤が唯一無二と思われていたし、そのリリースもセンセーショナルなものだった。
しかし彼がショパン・コンクールに優勝した1960年、EMIに録音したマスターが存在していた。
録音データを見るとその年の9月5日から16日の間にロンドンのアビー・ロード・スタジオで行われている。
プロデューサーは2010年に他界したピーター・アンドリーで、このCDは彼へのメモリーとして捧げられることになった。
コンクールが3月に催され、凱旋早々の翌4月にはポール・クレツキとの協演でショパンの協奏曲第1番を順調に録音したが、ライナー・ノーツにはポリーニ自身がこの『エチュード』のリリースを今日に至るまで承諾しなかった経緯も書かれている。
それはその後彼が楽壇から去ってしまったことと共通した理由だ。
全体の演奏時間は59分54秒で曲ごとに若干の差はあるが、また幾つかの曲に関しては12年後のグラモフォン盤とストップ・ウォッチで計ったように全く変わっていない。
言い換えれば彼は既にこの時期に『エチュード』のテンポについて、殆んど完璧なアイデアを持っていたことが想像できる。
だが表現ということになると大分異なった印象を持つ。
両方のCDを聴き比べた方なら直ぐに気が付いたと思うが、洗練という意味においては1972年盤が優っている。
それでもこの演奏には堰を切って溢れ出すような情熱の発露があり、細やかな感情の変化にも富んでいる。
それはまさに彼の芸術家としての成長期の、ある種の苦悩の表現だったのかも知れない。
英テスタメント・レーベルからのライセンス・リイシュー盤で、ディジタル・リマスタリングされた歴としたステレオ録音。
音質はピアノの表現力の幅広さを良く捉えた、当時としては極めて良好なもので鑑賞に煩わしさはない。
英、独、仏語の簡易なライナー・ノーツが付いていて、表紙と裏面に印刷されている若き日のポリーニの写真を見ると隔世の感がある。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。