2018年12月10日

シュトゥルム・ウント・ドラング的モーツァルトの解釈


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2004年に自らモーツァルト管弦楽団を組織して以来、アバドは数年間にモーツァルトのオーケストラル・ワークを集中的に録音した。

この2枚組のヴァイオリン協奏曲全集は2007年にコンサート・マスターでもあるジュリアーノ・カルミニョーラをソロに迎えて録音された。

カルミニョーラは1997年にイル・クァルテットーネとの弾き振りで既にこの曲集をリリースしているので、聴き比べた感想を簡単に書いてみる。

すぐに気づくことはこの新録音の方がテンポの設定が速めで、10年前の演奏の方がかえって落ち着いた古典的な優雅さを保っているのは意外だった。

ライナー・ノーツにはカルミニョーラの強い意向をアバドが反映させたとしているが、例えば第1番変ロ長調の第3楽章ではソロ・ヴァイオリンのヴィルトゥオーソ性が強調されて彼の華麗なテクニックが前面に出る結果になった。

また第5番イ長調『トルコ風』の名高いテンポ・ディ・メヌエットでの目の覚めるようなダイナミックな対比が以前より一層徹底されている。

こうしたシュトゥルム・ウント・ドラング的な曲作りは劇的な生命力に漲った斬新な解釈だ。

カデンツァは第4番ニ長調の終楽章を除いて総て彼の師であったフランコ・グッリの手になるもので、音楽的にも技巧的にもかなり充実した内容になっている。

また最後に置かれたソロ・ヴィオラが加わるシンフォニア・コンチェルタンテでは若手の女流ヴィオラ奏者、ダニューシャ・ヴァスキエヴィチが起用されている。

全曲ともピッチはやや低めのa=430を採用。カルミニョーラの使用楽器はストラディヴァリウス(BAILLOT,1732年)で数年前にボローニャ貯蓄銀行財団から貸与されたものだ。

録音状態は極めて良好。

ジュリアーノ・カルミニョーラは1951年生まれだから、このセッションがあった2007年は55歳の円熟期にあり、現在でもイタリアのヴァイオリニストの中では最も充実した演奏活動を行っている。

彼のレパートリーはバロックから古典派にかけてが中心で、ピリオド奏法を駆使したメリハリのある表現と凝り過ぎないストレートなカンタービレ、それにここでは名器ストラディヴァリウスの明るく艶やかな響きが特徴と言える。

彼はまた今年2011年にシャンゼリゼ管弦楽団との協演でハイドンの協奏曲集もCD化している。

一方アバドについてだが、晩年に手兵モーツァルト管弦楽団との定期公演ライヴを次々とリリースしていて、しかもこの曲集でも聴かれるようにオーケストラにも徹底したピリオド奏法を課している。

ヴィブラートを最小限に抑えた歯切れの良いリズム感や軽快なテンポの運び方は、近年の彼の音楽観の変化とモーツァルトの作品に対する新しい解釈を試みているようで、老いて益々意欲的な活動が頼もしい。

2014年1月、80歳で生涯を閉じた。

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classicalmusic at 00:19コメント(0)モーツァルト | アバド 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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