2018年12月16日
ミケランジェリ、デッカ、グラモフォンへのコンプリート・レコーディングス
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名ピアニスト、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920-1995)が、ドイツ・グラモフォンとデッカで制作したレコーディングを集大成したボックスセット。
ミケランジェリがドイツ・グラモフォンで制作したレコーディングは、CDで個別にリリースされたのち、1995年にCD11枚組セットとしてリリースされ、2002年には1枚当たりの収録時間を増やしてCD8枚組の廉価ボックスとして発売、ロングセラー商品となっていた。
ここに紹介する10枚組セットは、2009年に発売されたバレンボイム、パリ管弦楽団とのシューマンのピアノ協奏曲(1984年ライヴ録音)と、かなり以前に廃盤になっていたベートーヴェン、ガルッピ、スカルラッティのデッカへのセッション(1964年ローマ)を追加収録したうえで、更なるプライスダウンを図ったものとなる。
これまでにミケランジェリのセット物は他レーベルからもリリースされているが、一番音質に恵まれているのがこの10枚組だ。
シューマン『謝肉祭』『ウィーンの謝肉祭の道化』のみが1957年のBBCへの放送音源ということでモノラル録音になるが、音質そのものはたいへん良好で、若きミケランジェリの切れの良い演奏を楽しめる。
これも含めて極めて良好なサウンドでミケランジェリ独特の研ぎ澄まされたテクニックを駆使した解釈を堪能できるので、旧セットを持っていない方には朗報に違いない。
ミケランジェリがドイツ・グラモフォンとデッカで、セッションを組んで録音した演奏の数々は、良質な音の状態と相俟って極めて精度の高いピアノ音楽の魅力を伝えてくれる。
磨きぬかれた美しい音とエレガントな歌いまわし、ときに意表を尽く大胆なテンポ・ルバートを駆使しながらも、常に明晰をきわめた造形美が印象的なミケランジェリのピアノ演奏は、まさに唯一無二といっていい見事なものだった。
精錬された音から端正な造形美が立ち表れるベートーヴェンのピアノ・ソナタ、磨き抜かれた抒情が感銘を深いショパン、不純物ゼロの研ぎ澄まされた感覚美が凄いドビュッシー等々、どれも極め付きの逸品ばかり。
中でも彼がその本領を縦横に発揮しているのはドビュッシーの演奏で、クリスタリックな透明感から醸し出されるシュールレアリズム的な音響が、フランス系のピアニストの伝統的な陰翳描写とは一線を画した絶品だ。
一方、ライヴ録音に関してはより自由度の高い傾向となっており、1984年のバレンボイムとのシューマンもやりたい放題の演奏だった。
その後、1988年10月の心臓手術以降は、さらに感興重視のスタイルに変わっており、モーツァルトのピアノ協奏曲の録音でもそうした雰囲気を感じることができる。
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