2019年01月01日

湧き出るような美しい音色と熟達したアンサンブル、スメタナSQ&スークのモーツァルト弦楽五重奏曲全集


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スメタナ四重奏団は1976年から83年にかけてモーツァルトの6曲の弦楽五重奏曲を、ヨセフ・スークを第1ヴィオラに迎えてディジタル録音しているが、その総てがブルー・スペックCDとしてリニューアルされた。

いずれもマスターの良い音質が活かされた、従来盤に比べて明瞭かつ新鮮な音質が再現されているので、新規に購入されたい方には、価格もそれほど変わらないこちらの新盤をお薦めする。

モーツァルトの恒久的な幸福感に充たされた表現が秀逸で、古典派の様式をわきまえたごく正統的な解釈であっても、溢れんばかりの躍動感や、常に新鮮な感覚を失わないアンサンブルの美しさは流石だ。

スメタナ四重奏団の魅力は、弦の国チェコのアンサンブルだけあって、明るく伸びやかな音色を活かした屈託の無さと、隙の無い緊密な合奏力にある。

その彼らに、やはりチェコを代表するスークがヴィオラに加わった、かけがえの無い理想的な演奏が繰り広げられている。

第3番と第4番はどちらも1976年の録音でスメタナ四重奏団とスーク全盛期のセッションでもあり、精緻を極めたアンサンブルと美しくおおらかな表現が秀逸。

第3番ハ長調では作曲家天性の晴朗さが彼らの落ち着いたテンポ設定によって古典派特有の形式美を伴って再現され、意味の無い感情表出に拘泥しない極めて透明度の高い演奏だ。

一方第4番はモーツァルトにとって意味深い調性ト短調で書かれているが、ここでも彼らのアプローチは決して憂愁に媚びるものではなく、むしろ明るく艶やかな音色を活かして流麗な曲想をダイレクトに辿っている。

しかしその解釈は言葉では言い尽くせないほど懐が深いために、かえってモーツァルトの内面的な音楽性を浮かび上がらせることに成功しているのも事実だ。

第1番変ロ長調での意欲的なダイナミズムの投入は、こうした作曲家の若書きの作品本来の生命を新たに吹き込んでいるような爽快感がある。

一方第5番ニ長調は、モーツァルト円熟期の豊かな音楽性と巧みな作曲技法を手に取るように再現している味わい深いアンサンブルが聴き所だろう。

第2番ハ短調は、モーツァルトが自作の管楽八重奏曲『ナハトムジーク』KV388を殆んどそのまま弦楽用にアレンジしたもので、珍しく短調で書かれているためか、スメタナの明るいトーンの基調のなかにも特有の憂愁の雰囲気が醸し出されている。

原曲と比較するために持ち合わせていたベーム指揮のウィーン・フィルの管楽メンバーによる演奏と聴き比べたが、管楽器ではより華やかでスペクタクルな趣が出ているのに対して、弦楽では精緻なアンサンブルがこの曲の内面的な高い音楽性を表現していて、全く異なった曲のような印象を与える。

第6番変ホ長調は作曲家最晩年の作品でモーツァルトの典型的な音楽様式が集約されたような曲だ。

ここでも彼らの弦の音色の美しさと細部まで練り上げられた高度な合奏の魅力が聴き所で、特に第3楽章のトリオの部分にあるヴァイオリンとヴィオラのユニゾンで聴かせる鄙びたメロディーや終楽章のフーガでのこれほど息の合った、しかも余裕を持った演奏はそうざらにあるものではない。

ヨーロッパでは指折りの長命を誇ったスメタナ四重奏団のディスコグラフィーを見ると、量的にも圧倒的に他を凌駕しているのがベートーヴェンの弦楽四重奏曲だが、その次がモーツァルトで第14番から第20番までの弦楽四重奏曲と、これらの6曲の弦楽五重奏曲、そしてクラリネット五重奏曲の録音が残されている。

いずれも湧き出るような美しい音色と表現の豊かさ、そして何よりも増して熟達したアンサンブルの巧みさが特徴だろう。

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classicalmusic at 17:45コメント(0)スメタナSQ | スーク 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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