2019年01月23日

ケンペ、バンベルクによる『売られた花嫁』全曲盤


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ルドルフ・ケンペがカイルベルト首席時代のバンベルク交響楽団へ客演したオペラ全曲盤で、1962年の収録だが当時のエレクトローラが、録音技術的にも他の大手メーカーに決して劣っていなかったことを証明している高い解像度のステレオ録音と臨場感に驚かされる。

音場にも拡がりがあり、オペラの舞台を髣髴とさせてくれる。

このレーベルは英グラモフォンのドイツ支部で、親会社と英コロムビアの合併でEMI傘下になったが、オペラ全曲盤ではデッカに主導権を取られた本家EMIとは音質に対するポリシーで一線を画していたことが理解できる。

当初このオペラはセリフ付2幕仕立てのオペラ・コミークのスタイルで作曲されたが、後にスメタナ自身によって終幕第2場のサーカス団長の口上以外の総てのセリフに音楽をつけたレチタティーヴォに替えられ、バレー付3幕のグランド・オペラ様式の喜歌劇に仕上げられたようだ。

鑑賞しているとドニゼッティの『愛の妙薬』からインスピレーションを得ていることが感じられる。

オリジナルのリブレットは当然チェコ語だが、ここでは伝統的な上演習慣に従ったマックス・カルベックのドイツ語訳詞で歌われていて、登場人物も主役マジェンカはマリー、イェニークはハンスとドイツ風に改名されている。

その意味では原作のボヘミア的雰囲気はやや後退しているが、この作品はポルカやフリアントなどの民族舞踏を配してローカル色を出しているものの、交響詩集『我が祖国』のような民族意識を高揚する作品ではなく、その普遍性がよりインターナショナルな解釈を可能にした優れたサンプルとも言えるだろう。

バンベルクはオペラ劇場を持たない都市なので、普段彼らがオーケストラ・ピットに入ることはないが、この演奏に聴かれるようにケンペの統率の下に良く歌い、歌手陣に巧妙に合わせる融通性も鍛えられている。

それはドレスデンやメトロポリタンを始めとする欧米での豊富な劇場経験を活かしたケンペの力量に負っているのだが、バンベルク交響楽団は戦後チェコから追われたドイツ系奏者達が母体になって創設されたオーケストラなので、本来チェコの音楽には造詣が深く彼らの得意なレパートリーであることには違いない。

またローレンガーやヴンダーリヒ、フリックなどの芸達者な名歌手を牽引して生き生きとした舞台を創るケンペの快演も特筆される。

序曲は単独でも演奏される名曲だが、目まぐるしく迸り出るようなカノンをケンペは颯爽としたダイナミズムで、ハッピー・エンディングの大団円で幕を下ろすこのオペラの性格を象徴している。

花嫁マリー役のピラール・ローレンガーはスペイン出身だが主としてドイツで活躍したリリック・ソプラノで、第3幕第6場でのアリアでは可憐で純情なマリーの心情を巧みに表現している。

夭折したヴンダーリヒは、この頃テノールとしては全盛期でオペレッタからワーグナーの楽劇まで八面六臂の活躍をしていた。

ドイツ人としては例外的に柔軟かつ爽やかな美声で婚約者ハンス役を演じているが、第2幕第4場での結婚周旋人ケツァルとのデュエットで爽快な高いhを響かせ、続くアリアではマリーへの憧憬と情熱が輝かしく歌われている。

このシーンは『愛の妙薬』でのネモリーノとベルコーレのデュエットをイメージさせる。

バスのゴットロープ・フリックはアクの強い嫌われ役にはうってつけで、ここでは結婚周旋で大儲けを企むが、結局一泡吹かされる滑稽で間抜けなケツァル役での実力を発揮している。

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classicalmusic at 20:17コメント(0)スメタナ | ケンペ 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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