2019年01月15日
戦慄が走るスメタナ四重奏団のヤナーチェク弦楽四重奏曲
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ブルースペック・リニューアル・シリーズの1枚で、このCDの録音は1979年プラハでのライヴから採られている。
拍手が無ければセッションと聴き違えるほど雑音のまったく無いクリアーな音質が再現されているのが特徴だ。
これは当時のスプラフォンの録音技術の高さと今回のリニューアルの相乗効果の結果と言えるだろう。
ヤナーチェクという作曲家の憧憬や焦燥といった心理状態が凄絶なまでに写し出された音楽を、スメタナ四重奏団の精緻を極めたアンサンブルが克明に辿っていくのがこの2曲の聴き所だ。
ライヴ特有の緊張感の中に戦慄が走るような一体感で彼らの演奏が繰り広げられる。
確かに彼らは作曲家と同じチェコの音楽家であり、これらの曲に使われている民族的なエレメントや音楽に隠された言葉のアクセントやイントネーションを悟ることにそれほどの困難は無いかも知れない。
だがスメタナ四重奏団には単に同郷の強みだけではない、言ってみればこうした特異な音楽を普遍的な芸術に昇華する合奏力をもっている。
4人の奏者が一心同体となって作品の深部に迫ってゆくが、その際微妙に絡み合う声部が生み出す表情が生きているし、リズムに自発性があって活力がある。
彼らにとっては4回目の録音で、ヤナーチェクの強いメッセージを感じることができる数少ない演奏だ。
彼らは弦楽四重奏の歴史上、忘れることのできないチェコの名四重奏団で、チェコの伝統とも言える弦の美とアンサンブルの妙を聴かせ、しなやかな歌とあたたかな人間味を感じさせる表現は聴き手を魅了してやまなかった。
この盤でも自国の音楽だけに他の追従できない境地をみせ、安定した響きと真摯な演奏で、人間ヤナーチェクとその世界を描出している。
第1番『クロイツェル・ソナタ』はトルストイの名作文学に霊感を受けて書かれたもので、第2番『ないしょの手紙』は38歳も年下の人妻と親密な交際を続けていたヤナーチェクが、彼女への想いを音楽に託して表現したものである。
尚楽譜の校定は同四重奏団のヴィオラ奏者シュカンパの手になるもので、先代の奏者によって不用意に加筆が加えられていた第1番の譜面を、作曲者が認知したパート譜の写本を取り揃えることによって再構成し、作曲者の意図を明確に訴えかけることが可能な楽譜を出版することに成功したのだった。
その成果はこの録音に見事に反映されていて、ヤナーチェクが表現したかったドラマの世界が、暗譜演奏の興奮を伴って、いとも解明に表出されている。
このCDのオリジナル・マスターはPCMデジタル録音で、音質は極めて鮮明。
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