2022年10月12日
ポリーニの至芸👨🎨満を持してのバッハ初録音⏺️アポロン的『平均律』🛸研鑽に研鑽を重ねてついに自身納得の行くものと成り得たアルバム🩸
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マウリツィオ・ポリーニは、リサイタルではこの平均律クラヴィーア曲集を取り上げてきたが、いつものように研鑽に研鑽を重ねてついに自身納得の行くものと成り得たのがこのアルバムということになる。
まさに満を持してのバッハ初録音である。
ポリーニという芸術家には完璧とも言えるピアノ演奏の技巧を身につけた上で、これまた確かな教養を裏づけとして、レパートリーを決めうち気味に制覇する完全主義的な雰囲気があった。
なので、近年の録音活動の活発化は、彼のファンには歓迎の至りだろう。
しかも彼が無敵のテクニックを誇っていた時代ではなく、彼のキャリアの殆んど終盤に近い時期に『平均律』を録音したことに、彼が長年に亘って温めていた遠大な構想を垣間見る思いがする。
おそらく無限とも言える表現の可能性を持っているために、演奏上の限りない試行錯誤が要求されるこの曲集は、ピアニストとして、そして何よりも音楽家として豊富な経験を積んだ今の彼でなければできないことを彼自身が自覚していたに違いない。
それだけに決して野心的な演奏ではなく、むしろ自然体の境地にあるかのような誇張のない、心を込めた表現が息づいている。
24の調で書かれたプレリュードでは音楽の内部から迸り出る個性以外の個性付けは避けているが、曲ごとの特徴を心憎いほど的確に捉えているのも事実だ。
それに続くフーガの各声部は独立しているという以上に自由に解き放たれ、老獪とも言えるペダリングによってまろやかに潤っているが、それでいて全く混濁のない響きと、隙のない緊張感の持続が特徴的だ。
またそれぞれの曲に対する造形美と曲集全体に与える統一感は彼本来の手法でもあるだろう。
リヒテルの『平均律』が彼の非凡な創造性とピアノという楽器の機能を駆使したデュオニュソス的表現とするなら、ポリーニのそれは総てを秩序の下に明瞭に奏でた、アポロン的な『平均律』と言えるのではないだろうか。
2008年9月、2009年2月、ミュンヘンにて収録されたもので、音質の素晴らしさも特筆される。
尚、同曲集第2巻の完成も大いに期待されるが、彼のマイペースぶりからして待つ側も長期戦の構えが必要だ。
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