2019年01月25日
幽玄の響き、ブラームスの弦楽六重奏曲
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スメタナ四重奏団によるブラームスの録音は意外に少なく、ここに収められた2曲の弦楽六重奏曲のほかには弦楽四重奏曲第3番変ロ長調とクラリネット五重奏曲ロ短調があるだけで、しかもそれらの2曲はいずれも1960年代のもので、その後再録音の機会には恵まれなかったようだ。
一方こちらの六重奏曲のほうは1987年のディジタル録音になり、コチアン四重奏団のメンバーに第2ヴィオラとしてシュカンパ、第2チェロにコホウトが加わるという変則的なメンバーによる演奏だが、アンサンブルの完璧さでは他の追随を許さないものがある。
コチアン四重奏団は1972年にコホウトの指導の下に結成され、スメタナ四重奏団とは師弟関係にあり、室内楽の国チェコの良き伝統が、美しく受け継がれていく様子を綴った偉大な記録と言えよう。
多彩な音色の変化と、アンサンブルの緊密さに抜きん出た優れた演奏で、彼らが着実に成長していた印象を深める。
今回ブルー・スペックCDでこの名演がリニューアルされ、以前にも増して本来の弦の音色を再現できるようになったことは評価したい。
コチアンの4人にヴィオラとチェロを加えたこの六重奏は、流石にアンサンブルの妙味を見せて、しっくりとまとまって、厚みがあり、微妙な色合いの変化もある見事な室内楽と言って良い。
彼らが特に秀でているのは、6人が同等の立場でお互いのパートを細心の注意を払って聴き合い、絶妙な音楽の流れを創りだすところにある。
どちらも穏やかな中にも隠された情熱と緊張感を孕んだ楽想が支配的だが、それだけに低音を受け持つスメタナ四重奏団の2人には、ことさら曲想が重苦しくならないようにするための格別な配慮が感じられる。
そこには殆んど祈りにも似た静謐と安堵の世界が広がり、一種幽玄のたたずまいを呈しているといっても過言ではない。
こうしたところにもブラームスのアンサンブルの醍醐味があることを改めて納得させられる演奏だ。
特に第1番は音色ばかりではなく、様式感においても統一のとれた解釈に基づいており、旋律を歌わせるときのこまやかな情感はこの曲の抒情性に最適だ。
曲自体がシンフォニックに傾く第1番では耳に優しい室内楽として再現しているのに対し、第2番では味を濃くつけて熱っぽく弾いている。
ブラームスの手掛けた一番大きな編成の室内楽曲が、この2曲の弦楽六重奏曲で、第1番は27歳の1860年に、第2番はその5年後に完成した。
この弦楽六重奏という形式は、弦楽四重奏にヴィオラとチェロをだぶらせたもので、音響的には中、低音域が厚すぎて扱いが難しいため、あまり取り上げられることのない形式であった。
ブラームスは、先輩ベートーヴェンでさえ手を染めなかったこの形式に挑戦して、輝かしい成果を収めたのである。
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