2019年01月31日
スメタナ四重奏団の十八番、伝統音楽の芸術への昇華
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ブルー・スペックCDとして再発されたシリーズの1枚で、他の演奏家に先駆けて逸早くPCM方式のデジタル録音を取り入れたスメタナ四重奏団だけあって、1976年にプラハで行われたこのセッションも、ヒス・ノイズの全くない澄んだ音質で収録されている。
また今回のブルー・スペックCD化によって、オリジナル・マスターの持ち味がより顕著になったようだ。
特にこのアンサンブル特有の明るく流麗な弦の響きの再現と、楽器間の定位とバランスの良さは旧盤を凌いでいる。
その名を自分達の団体の名称として冠していることからも分かるように、スメタナの弦楽四重奏曲はこの四重奏団にとって特別の作品と言っても良いだろう。
チェコの人達が自国の音楽の父としてのスメタナに抱く尊敬の念が並々ならぬことは周知の通りだが、その名を団体名に冠するということは、国民から最高の称号を与えられたようなもので、スメタナ四重奏団がそれを誇りとし、スメタナに深い尊敬と共感を抱いていたことは言うまでもない。
当然スメタナの2曲の弦楽四重奏曲は彼らの言わば看板のようなもので、これだけは人後に落ちることを彼ら自身が許せなかっただろう。
この録音は結成して30年を経た録音だが、彼らはこれ以前にもモノラル、ステレオと2度スメタナを録音している。
このように何度も録音を重ねながら、その解釈や表現は決して手垢にまみれたルーティンな性格を見せることなく、実に新鮮な共感や感動に裏付けられたものである。
実際ここに聴ける演奏の説得力の大きさや内実の豊かさは尋常ではなく、1つ1つの音に生命が漲り、まるで作曲家本人の声が聴こえてくるような実在感に溢れている。
ちょっとやそっとでは動じることのない絶大な安定感をベースに、4人の感性や呼吸がほとんど1つの有機体のように自在に働き反応する様には、まさに圧倒的な感銘を与えられずにはいられない。
弦楽四重奏曲第1番ホ短調はスメタナ自身が自らの生涯を振り返って、その思い出をカルテットに託して綴った自伝的作品で、第2番ニ短調はその続編に当たる、作曲家最晩年の白鳥の歌とも言える。
スメタナ四重奏団の優れているところは、この2曲を綺麗ごとでもなければ誰の真似事でもない自分達が直接受け継いだ直伝の音楽として取り組んでいることだ。
そこには同郷の作曲家に対する敬意や自負が感じられるし、何よりもチェコの音楽の伝統を引き継いでいこうとする情熱的な使命感が漲っている。
それは偏狭なナショナリズムではなく、むしろ作曲家の目指した普遍的な音楽芸術への昇華ではないだろうか。
有名な第1番に示された、円熟し磐石の安定を示す規範的な名演はもとより、とりわけ第2番の素晴らしさが注目に値する。
そのいかにも安定した豊かで充実した響き、民族的リズムやメロディへの敏感な反応、一分の隙もない精妙なアンサンブルなど、当分これを超える演奏は出ないのではないかと思えるほどに、絶妙な演奏が展開されている。
第2番は、第1番に比して必ずしも作品の良さが認識されていないきらいがあるが、それが全く不当であることをこの演奏は徹底的に知らしめてくれる。
それは単に本場物という意味を超えて、普遍的な価値を持った演奏であり、この作品解釈の規範となるべき名演と言えよう。
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