2019年02月12日
日常的な感覚のレパートリーとして多様な舞曲を楽しませてくれる本場物
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3種類あるノイマン、チェコ・フィルの『スラヴ舞曲集』全曲集の中では第2回目に当たる1985年のデジタル録音で、1回目より格段に音質が良くなっている。
特に高音が鮮明で、パーカッションの飛び散るようなきらめきを伴った音色が新鮮に感じられる。
またセッションが行われたルドルフィヌムのドヴォルザーク・ホールの豊かな残響も潤沢なサウンドを提供していて好感が持てる。
そして何よりもチェコ・フィルの長所が良く出た演奏で、瑞々しい弦楽器の明るく涼やかな音色と、どんな時にも重厚になり過ぎない管楽器の軽快さや機動力が縦横に発揮されているのは流石だ。
指揮者ノイマンは誇張も小細工もせずに中庸をわきまえた自然体で臨んでいるが、要所要所ではテンポを動かし、控えめながら巧みなディナーミクを使ってオーケストラから自然に湧き出るような音楽を引き出している。
彼らにとってドヴォルザークはお国ものでもあり、迸り出るような情熱的な舞踏の表現も全くあざとさがないのは本家の余裕と言うべきだろうか。
第2集の終曲変イ長調での優雅で少しだけ感傷的なワルツも媚びるようなところはなく、高踏的な雰囲気を醸し出していて秀逸。
この曲集の録音は数多く存在するし、またこれ以上に民族主義的なドラマティックで熱狂的な演奏も少なくない。
しかしノイマン、チェコ・フィルのコンビによる当CDは洗練された趣味と軽妙洒脱なオーケストレーションの解釈、音色の変化の美しさなどで入門者にも理解しやすい平明さを持っている。
ドヴォルザークの『スラヴ舞曲』を、通常のコンサートで全曲演奏するということは殆ど考えられないし、大部分のオーケストラにとっても、特別な意味をもつことは考えられない。
ただ、チェコ・フィルの場合には、彼らが『我が祖国』を演奏するほどではないとしても、民族的な共感のもとにそれがあったとしても不思議はあるまい。
しかし、実際に多くの人々にとって、この作品に接する機会は、コンサートのプログラムの中であるよりも、その何曲かがアンコールとして演奏されるときのほうが多いのではないだろうか。
そうしたなかで、このノイマンの演奏は、ある種の必然と日常的な感覚のもとにあるレパートリーとして、多様な舞曲を楽しませてくれるものということができる。
ただ、この言わば本場物の演奏でも、細部のオーケストレーションに手が加えられているということは興味深い。
もっとも、一部は既に慣習となっているようだが、ドヴォルザーク・ファンであれば1度は聴いてみたいセッションだろう。
尚同様のコンビによる1993年の3回目の録音はDSDデジタルでSACD化されていて音質は更に良くなっているが、こちらには捨てがたい特有の覇気があって音楽的に決して劣るものではない。
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