2019年02月07日

誠実で緻密な音楽設計、フルシャの『我が祖国』


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チェコの若手指揮者ヤクブ・フルシャがバンベルク交響楽団の客演指揮者として振った、スメタナの交響詩集『我が祖国』全曲録音で、彼は2016年に同オーケストラの首席指揮者に就任したので彼らの共演した最初のディスクでもある。

東京都交響楽団の首席客演指揮者として日本でもお馴染みのフルシャは、まだ30代半ばだがチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の常任客演指揮者にも任じられており、21世紀のチェコのクラシック音楽界を背負って立つ才能として大きな期待が寄せられている。

この録音はその期待に答えた素晴らしい演奏だ。

チェコ人が持つ『我が祖国』への熱い思いが湧き上がりつつも、現代的な知性で楽譜の隅々にまで配慮を行き届かせた演奏である。

そして前身がプラハのドイツ人オーケストラであるバンベルク交響楽団が、フルシャの素晴らしい音楽にドイツのオーケストラの充実した音を加えている。

この曲集はチェコの祖国愛を高らかに歌い上げる作品として、これまでターリヒ、クーベリック、アンチェル、スメターチェクやノイマンなどがチェコ・フィルとの名演を遺しているが、フルシャは情熱で押し切るタイプではなく、何度かコンサートで体験したことだがライヴでも爆演などはしない。

それゆえこの演奏にそうした熱狂を求めると当て外れになるだろうが、フルシャの音楽設計は明瞭に感知できる。

先ず1曲ずつの構成、例えばフーガなどのスメタナのオーケストレーションのテクスチュアを綿密に仕上げてそれぞれが独立して演奏されても作品として不足するものがないだけの聴かせどころをつくっている。

そして全6曲が纏まった時に更にその効果が高まるようにも考えられていて、彼が知性的な指揮者と言われる所以だ。

またオーケストラから最高の音を引き出すことでも名人だろう。

おそらくパートごとの練習にもかなりの時間をかけていると思われるが、それくらい彼らのハーモニーは純粋に響く。

例えば第1曲『高い城』でのハープの導入と管楽アンサンブルの後の弦楽合奏は洗練されていて極めて美しいし、終曲『ブラニーク』のクライマックスでのブラスの響きはヴィブラートを押さえた純正調で鳴り響いて非常に力強く感じられる。

勿論個人的な演奏テクニックにかけても彼らは第一級だが、スター・プレイヤー的な華麗な奏者がいないオーケストラだけに、音色はそれほどきらびやかではない。

しかしそれを補って余りあるのがこうしたアンサンブルの力量だ。

また誠実だが退屈な演奏ではなく、第3曲『シャールカ』最後の追い込みではその激しく熱のこもった演奏を堪能できる。

始まったばかりのフルシャとバンベルク交響楽団の時代だが、就任前のこの録音から既に素晴らしい一時代が築かれることが予見できるようだ。

2015年から翌16年にかけての録音で、チューダー・レーベルのハイブリッドSACD盤はジョナサン・ノット首席時代から盛んに制作されて、バンベルク交響楽団の実力を披露しているが、音質はSACDで聴く限りかなり鮮明で良好なサウンドが得られている。

弦の滑らかさやブラス、ウィンド・セクションの潤沢な響きも印象的だが、特にパーカッションの高音部を受け持つシンバルやトライアングルの鋭利な音色は決して強調されてはいないが、レギュラー・フォーマットのCDでは味わうことができない自然な繊細さが感じられる。

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classicalmusic at 01:28コメント(0)スメタナ  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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