2019年02月08日

湧き上がる歓喜、アバド、ウィーン・フィルによる瑞々しいベートーヴェン全集


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クラウディオ・アバドのベートーヴェン:交響曲全集はベルリン・フィルとの協演のCD、DVDが圧倒的に市場を占めていて、1987年から89年にかけて録音されたウィーン・フィルとの旧全集の方は隅に押しやられているのが実情だ。

しかしアバドのベートーヴェンの交響曲旧全集には、彼が振る以前のウィーン・フィルでは聴くことのできなかった明るく流麗で、しかも四肢を自由に広げたような奔放とも言える表現がある。

ウィーン・フィルの持つ音色の瑞々しさとしなやかさを溢れんばかりのカンタービレに託した柔軟な表現が特徴だ。

哲学的な深み云々よりも率直でストレートな、いわゆるイタリア的なアプローチを試みた演奏で、オーケストラもアバドの要求に良く応えているだけでなく、むしろ自分達の音楽としてそれを自発的に取り入れているのが聴き所だろう。

ウィーン・フィルの持ち味でもあるシックで瑞々しい響きを最大限に活かしながら、流れるようなカンタービレでベートーヴェンの新たな美学を描いてみせた秀演で、音楽の内部から湧き出るような歌心を表現することによって、滞ることのない奔流のような推進力がそれぞれの曲に生命感を吹き込んでいる。

ここではかつての名指揮者が執拗に繰り返した、ベートーヴェンの音楽の深刻さは影を潜め、どちらかと言えば楽天的な趣きさえ感じられるが、その華麗な演奏スタイルとスペクタクルなスケール感はアバドの身上とするところだろう。

それはかつての質実剛健で重厚なベートーヴェン像からすれば、意外なくらい明るく軽快な趣を持っているが、それがかえってスケールの大きさと柔軟なドラマ性の獲得に繋がっている。

また各曲の終楽章に聴かれるように豪快で喚起に漲ったスケールの大きい指揮ぶりはベルリン・フィルとの新録音に決して優るとも劣らない。

特に第3番『エロイカ』ではそうした彼の長所が遺憾なく発揮されている。

第2楽章の葬送行進曲では辛気臭さは全く感じられず、むしろ流暢なカンタービレの横溢が特徴的だ。

また終楽章での飛翔するようなオーケストラの躍動感とウィーン・フィル特有の練り上げられた音色の美しさが、決定的にこの大曲の性格を一新している。

曲中の随所で大活躍するウィンナ・ホルンの特有の渋みを含んだ味のある響きとそのアンサンブルは他のオーケストラでは聴くことができない。

尚カップリングされた序曲集も作曲家の音楽性を瑞々しく歌い上げた、しかも威風堂々たる演奏が秀逸だ。

音質は極めて良好で、録音会場となったムジークフェライン・グローサーザールの潤沢な残響が特徴的だし、低音の伸びが良く、各楽器ごとの独立性が高いことも評価できる。

クラウディオ・アバドはウィーン・シュターツオーパーの音楽監督への就任前夜からウィーン・フィルとベートーヴェンの作品を集中的にドイツ・グラモフォンに録音している。

カップリングはライヴの交響曲を中心に、余白を序曲等で満たした6枚の個別のCDとそれらをまとめたセット物もリリースされた。

彼はその後ベルリン・フィルと映像付の再録音を果たし、現在ではそちらの方が良く知られているし、先頃出された41枚組の箱物『ザ・シンフォニー・エディション』でも第2回目の全集がリイシューされているが、ウィーン・フィルとの旧全集の復活はアバド・ファンには朗報に違いない。

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classicalmusic at 20:17コメント(0)ベートーヴェン | アバド 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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