2019年02月20日

ドイツ・ロマン派と騎士道精神、馥郁たるドイツ・ロマンの薫り、シュタットフェルトの会心


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2005年にグレン・グールドばりに、バッハの『ゴールドベルク変奏曲』で華麗にデビューしたドイツのピアニスト、マルティン・シュタットフェルト。

早くもソニー・クラシカルから9枚目のアルバムとなる本作は、シュタットフェルトらしいテーマ性に満ちた1枚となった。

“ドイツ・ロマンティック”というタイトルで、ドイツ・ロマン派の極め付けともいえるワーグナーのオペラのピアノ・アレンジ(リスト編曲)から始まり、シューマンやブラームスといった、ドイツ・ロマン派といえば即座にその名が浮かぶ有名作曲家の作品が綴られていく。

また、ワーグナーの珍しいピアノ・ソロ作品もなかなか聴けない佳品で、ピアノのための作品だけではなく、オペラや歌曲のアレンジが多いところも、シュタットフェルトの鋭い主張を感じさせるところと言えよう。

ロマンスという言葉の起源を辿ると中世騎士道物語に発している。

放浪の騎士がその高潔さと神への敬虔な心から悪を挫き弱きを助け、貴婦人へのプラトニック・ラヴを謳い上げた幾百ものストーリーが創作された。

この騎士の姿は現実には有り得ない男の理想像なのだが、その滑稽なほどの高邁な精神はセルバンテスの『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』で痛烈にパロディー化されたにも拘らず、後のロマン派の多くの作曲家の永遠のテーマとして採り上げられることになる。

このディスクでシュタットフェルトが選曲したワーグナーの『トリスタン』や『タンホイザー』はまさにこうした物語をオペラ化したものに他ならない。

中でもシューマンは最もロマンティックな感性を持った作曲家ではないだろうか。

彼の音楽は文学と密接に結びついていて歌曲以外の作品、例えばここに収録された『森の情景』でもそのスピリットを感知させてくれる。

深い森は騎士物語の重要なエレメントだからだ。

ブラームスもまた『マゲローネのロマンス』で騎士道精神を高揚しているが、こうしたピアノ小品にも彼の文学的ロマン性が横溢している。

シュタットフェルトがデビューした頃、彼のモダンな解釈による明快で颯爽としたバッハは久々のバッハ弾きとして注目を集めたし演奏にも好感が持てたが、CDのリリースを重ねていくうちに、器用過ぎるほど器用なのだが何をやりたいのか良く分からないピアニストという印象が強くなって、その後それほど熱心に聴かなくなっていた。

むしろ同世代ではダヴィッド・フレーの方が終始一貫した主張を持ち続けているように思える。

しかしこのディスクではシュタットフェルトの意図は明らかだ。

それは本来の意味での中世騎士道のロマンティックな哲学的感性は本家のラテン系諸国よりもドイツに引き継がれ、多くの作曲家にインスピレーションを与えたからだろう。

その頃既にベルリオーズがあの『幻想交響曲』で人間の理想像どころか宿命的な破綻を描いていたことを考えれば、その思考回路の違いに驚かされる。

勿論ベートーヴェンも『フィデリオ』で騎士道精神を表現しているし、『アデライーデ』はプラトニック・ラヴが前提として了解されていると思える。

このディスクを鑑賞することによってドイツ・ロマン派の作曲家への作品への理解を一層深めることができるだろう。

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classicalmusic at 20:07コメント(0)シューマン | ワーグナー 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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