2019年02月27日

ジョルジョ・アルマーニを着たベートーヴェン、クレモナの弦楽四重奏曲全集


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クレモナ四重奏団が2012年から15年にかけてレコーディングしたベートーヴェンの弦楽四重奏曲16曲と『大フーガ』、それに弦楽五重奏曲ハ長調Op.29を8枚のハイブリッドSACDに纏めたセットで、これらは既に順次個別にリリースされていたものだ。

上に書いた見出しは、実は彼らがロンドンのウィグモア・ホールで行ったコンサートの時に『ザ・ストラド』誌評に書かれていた『古典的なフレーズを完璧に縫い取るモーツァルト、あたかもアルマーニのスーツのように』から剽窃したもので、クレモナ四重奏団の演奏の性質を言い得て妙な批評だ。

あくまでも古典芸術としての解釈が根底にありながら、ここにはすっかり現代人の感覚でリニューアルされたモダンで快活なベートーヴェン像が描かれている。

作品によって表情を見事に変え、優美な音色に加えて抜群の音程感で現代最高の呼び声高い四重奏団と言える。

アルバン・ベルク四重奏団の旧メンバー、ハット・バイエルレに師事しただけあって時には大胆でアグレッシブな表現も効果的だが、またイタリア人がDNAとして持っているカンタービレや音色に対する美学は俄然健在だ。

イタリアらしい明るく非常にクリアな発音が魅力の1つで、個々の音色が見事に溶け合った驚くべきアンサンブルを聴かせてくれる。

それは大先輩イタリア四重奏団の専売特許でもあったのだが、クレモナのメンバーはイタリア四重奏団のヴィオラ奏者だったピエロ・ファルッリやサルヴァトーレ・アッカルドの薫陶も受けている。

実際この演奏集に使われている楽器は総てグァルネリ、アマーティ、グァダニーニなどクレモナの名工が手掛けた歴史的名器とそのコピーで、ライナー・ノーツに作品ごとの使用楽器が明記されている。

尚弦楽五重奏曲ハ長調のみはヴィオラ・パートにエマーソン四重奏団のローレンス・ダットンをゲストに迎えている。

本全集では作品に合わせて使用楽器を変えているところにも注目で、音色の違いを楽しむこともできる。

第1ヴァイオリンのクリスティアーノ・グアルコが奏でる上記の名器の優美な音色は絶品の一言に尽きる。

また『大フーガ』の録音にて使用したヴィオラは1980年生まれのピエトロ・ガルジーニ制作によるものだ。

ガルジーニは若い頃からマウロ・スカルタベッリの工房で弦楽器作りに親しむようになり、その後、ルイジ・エルコレやガブリエーレ・ナターリに師事した若手職人である。

2008年3月には「フォルムと音楽:ヴァイオリンのメカニズム」と題した論文により、フィレンツェ大学建築学修士号を取得。

その後は修復や専門技術の分野で活躍し、特に過去の巨匠たちの傑作の複製の製造と、修復を仕事の2つの柱としているようだ。

名器と現代の新進気鋭の職人が制作した最新の優れた楽器も積極的に使用している。

現代の楽器も歴史的な楽器と同様に素晴らしいことを証明するかのような魂のこもった演奏を聴くことができる。

SACDで聴くと弦楽器の音質の鮮烈な解像度と臨場感に圧倒される。

定位が良く手に取るようにアンサンブルの醍醐味が味わえるし、またヴァイオリンの高音や擦弦音も耳障りでなく、おそらくベートーヴェンの同全曲盤では現在最も良い音質で鑑賞できるセットだろう。

イタリアではインターナショナルな水準に達したカルテットは少なく、かつてはイタリア四重奏団がその抒情性やカンタービレの美しさだけでなく、現代音楽を積極的に採り上げた殆んど唯一の存在だった。

演奏スタイルこそ異なっているが、幸いクレモナは彼らの成し遂げた業績を更新できるだけの実力を持っているものと信じる。

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classicalmusic at 20:25コメント(0)ベートーヴェン  

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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