2019年03月05日

神秘と幻想、クリュイタンスのペレアス


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ワーグナーの手法を取り入れながら、ワーグナーとは対照的な音楽を作り出した点で、ドビュッシーは牴侶爿瓩鬟錙璽哀福爾亮縛から解放したと言えよう。

その意味で、『ペレアスとメリザンド』は20世紀の歌劇の先駆となったが、また、これほどフランス語のディクションの美しさを生かした音楽は少ない。

1956年のスタジオ・モノラル録音で、歌手陣の声は驚くほど生々しく採られているが、オーケストラは声楽に比較して音量自体が幾分小さめで後方から聞こえてくるような印象を与える。

その為、解像度に関してはそれほど期待できないが、管弦楽のみの部分ではバランスも良くボリュームも充分で、全体的にみると録音状態は決して悪くない。

クリュイタンスのドビュッシーは録音こそ少ないが、やはり彼のラヴェルと並んで極めつけの味わいがあり、『ペレアスとメリザンド』でも音楽の微妙な響きを見事に再現している。

彼の解釈は、ドビュッシーの意図に沿っている点で比類がなく、自己の個性のすべてを音楽の本質を生かすことに捧げ、それが純粋で美しい世界を生み出すことになった。

微かなアクセントで流れてゆく声にオーケストラが繊細な色彩を重ねてゆく、構造の隅々まで神経の行き届いた彼の解釈は、カタストロフに向かう劇と音楽の緊張感を、自然で美しい流れをもって作り出している。

彼の繊細かつダイナミックな指揮はフランス国立放送局管弦楽団から、このオペラ特有の幻想的な魅力を余すところなく引き出して、彼らのフランス音楽への強みを堪能させてくれる。

主役の3人に当時の第一線級『ペレアス』歌い(ジャンセン、スゼー、ロス・アンヘレス)を選んだことは特筆され、今日では貴重である。

全曲を通じて台詞のアクセントをそのまま楽譜に写し取ったような、いわゆるレチタティーヴォの連続でオペラが進行するので、指揮者の文学的素養と歌手の細かいニュアンスの表出がこの作品の出来を左右してしまう。

その中で第3幕の冒頭で歌われる、僅か1分程度の唯一のメリザンドのアリア『私は日曜日に生まれた』が無伴奏というのも象徴的だが、全曲を通じてロス・アンへレスの歌唱はメリザンドの可憐な儚さと神秘的な魅力を醸し出していて絶品だ。

またゴローを演じるスゼーの滑らかなバリトンの美声と性格役者としての実力も高く評価したい。

ペレアス役のハイ・バリトン、ジャンセンは往年の名歌手シャルル・パンゼラの高弟でもあり、この役柄を熟知した表現の巧みさが聴き所だろう。

クリュイタンス盤の繊細な表現と暖かい感触を持った演奏には、捨て難い情感があり、モノラル録音ながら、この曲の最高の演奏と言えよう。

当CDは1995年に英テスタメントによってデジタル・リマスタリングされたEMIライセンス・リイシューで、フランス語のリブレットに英語対訳つきだが、このオペラはメーテルランクの原作が殆どそのまま歌詞として採用されている為、日本語訳が欲しい方には岩波文庫の杉本秀太郎氏の対訳が便利だ。

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classicalmusic at 20:18コメント(0)ドビュッシー | クリュイタンス 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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