2020年01月01日

永遠のアンサンブル、スメタナ四重奏団壮年期のベートーヴェン後期弦楽四重奏曲集


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スメタナ四重奏団によるベートーヴェンの弦楽四重奏曲の名演としては、1976〜1985年という約10年の歳月をかけてスタジオ録音したベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集が名高い。

さすがに、個性的という意味では、アルバン・ベルク四重奏団による全集(1978〜1983年)や、近年のタカーチ四重奏団による全集(2002年)などに敵わないと言えなくもないが、スメタナ四重奏団の息のあった絶妙のアンサンブル、そして、いささかもあざとさを感じさせない自然体のアプローチは、ベートーヴェンの音楽の美しさや魅力をダイレクトに聴き手に伝えることに大きく貢献していた。

もちろん、自然体といっても、ここぞという時の重量感溢れる力強さにもいささかの不足はないところであり、いい意味での剛柔バランスのとれた美しい演奏というのが、スメタナ四重奏団による演奏の最大の美質と言っても過言ではあるまい。

ベートーヴェンの楽曲というだけで、やたら肩に力が入ったり、はたまた威圧の対象とするような居丈高な演奏も散見されるところであるが、スメタナ弦楽四重奏団による演奏にはそのような力みや尊大さは皆無。

ベートーヴェンの音楽の美しさや魅力を真摯かつダイレクトに聴き手に伝えることに腐心しているとも言えるところであり、まさに音楽そのものを語らせる演奏に徹していると言っても過言ではあるまい。

今回マスターとして使用されたのは、総て前述の名盤の誉れ高い全集に収められた演奏の約20年前の旧録音で、彼らの活力に漲っていた時期の代表的な演奏だ。

全集があまりにも名高いことから、本盤の演奏はいささか影が薄い存在になりつつあるとも言えるが、メンバーが壮年期を迎えた頃のスメタナ四重奏団を代表する素晴らしい名演と高く評価したい。

演奏の基本的なアプローチについては、後年の全集の演奏とさしたる違いはない。

しかしながら、各メンバーが壮年期の心身ともに充実していた時期であったこともあり、後年の演奏にはない、畳み掛けていくような気迫や切れば血が噴き出してくるような強靭な生命力が演奏全体に漲っていると言えるところだ。

例えば大作第13番の大フーガでは鍛え上げられた緊密なアンサンブルによって、一瞬たりとも緊張感を失うことなく一気呵成に聴かせてしまう。

したがって、後年の円熟の名演よりも本盤の演奏の方を好む聴き手がいても何ら不思議ではないとも言える。

このセットに収められたベートーヴェンの6曲の後期弦楽四重奏曲は、彼の聴覚が完全に失われた後の作品で、音の世界から全く隔絶された彼の頭脳の中だけで思索され、生み出された。

その内容の深遠さには尋常ならざるものがあることから、前述のアルバン・ベルク四重奏団などによる名演などと比較すると、今一つ内容の踏み込み不足を感じさせないわけではないが、これだけ楽曲の魅力を安定した気持ちで堪能することができる本演奏に文句は言えまい。

スメタナ四重奏団は、こうした孤高の境地にあったベートーヴェンの作品が実は紙に書かれただけのものでない、実際に私達の心を強く打つ音楽であることを彼らのアンサンブルを通して証明した、稀にみる四重奏団だった。

いずれにしても、本盤の演奏は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の魅力を安定した気持ちで味わうことが可能な演奏としては最右翼に掲げられる素晴らしい名演と高く評価したい。

尚第11番(1962年録音)と第12番(1961年)は、これまでのCDリストから消えていたもので、スプラフォン独自のリマスタリングで復活した。

音質は極めて良好で、クレスト1000シリーズの廉価盤に比較してやや中低音に厚みのある、奥行きを感じさせるリマスターだ。

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classicalmusic at 13:15コメント(0)ベートーヴェン | スメタナSQ 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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