2019年03月31日
ブルーレイ・オーディオの鮮烈な音色、マルケヴィッチの『ファウストの劫罰』
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この演奏が録音されたのが1959年なので、初期ステレオ・レコーディング時代を代表するディスクなのだが、他の同時代のオーケストラル・ワークやオペラの音源の中に埋もれてしまった感がある。
それはベルリオーズのこの作品自体が売れ筋の演奏曲目ではないからかもしれない。
近年ではオペラとして舞台化された演出も試みられるようになったが、作曲家には当初からオペラの構想はなく、それゆえ序曲やバレエ・シーンもなければ幕仕立ての構成も持っていない、一種のカンタータと言うべきだろう。
しかしベルリオーズらしくハンガリー行進曲を始めとする彼の腕の冴えを見せたオーケストレーションの聴かせどころを数ヶ所に挿入している。
ハンガリー行進曲のコーダでパーカッション群が一斉に鳴り響く部分でも、比較的良好な分離状態が保たれていて、団子状の音の塊りになることが避けられている。
欲を言えばもう少し音場に奥行きが欲しいところだが、当時の録音技術を考えれば限界だったと思われる。
マルケヴィッチはこの作品の文学的な価値に注目し、劇場的な効果よりも純粋な音楽表現を重視している。
歌手もメフィストフェレスにハイ・バリトンのミシェル・ルーを配して悪魔的な軽妙さを表出しているし、マルグリートには陰翳の豊かな声のコンスエロ・ルビオを起用して作品全体が戯画化することを嫌っているようだ。
このゲーテの名作を絢爛豪華な額縁で飾ったのは少し後のグノーで、彼の『ファウスト』はオペラとしては素晴らしい出来だが、脚色による原作との乖離は否めない。
それでもグノーが『ファウストの劫罰』から多大な影響を受けていることが感知できる。
中でもタイトル・ロールを歌うテノール、リシャル・ヴェローの絶唱は特筆される。
ここでのマルケヴィッチの指揮はかなり厳格で、歌手陣に節度を崩さない限りでは良く歌わせているが、必要以上の派手さを要求せずスコアに書かれた音楽を率直に表現している。
このセットでもレギュラー・フォーマットの2枚のCDにブルーレイ・オーディオ・ディスクが抱き合わせになっている。
カール・リヒターのカンタータ集のように、出来れば後者だけでも別売りして欲しいところだが、再生機の普及に合わせて当分はこうしたリリースが続くだろう。
いずれにせよ良質のステレオ音源が今回ブルーレイ・オーディオ化によって更に鮮明に再生されるのは魅力的だ。
綴じ込みのライナー・ノーツには全歌詞のドイツ語と英語の対訳が掲載されている。
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