2019年03月29日
ロストロポーヴィチ、プロコフィエフ晩年の作品3曲
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プラガ・ディジタルスからのシリーズ、ジェニュイン・ステレオ・ラブの新譜で、従来のSACD仕様ではないが音質の良好な隠れた名演を鑑賞することができる。
1964年にモスクワ音楽院で催されたライヴからの収録だが、オン・マイクで採ったステレオ音源の保存状態も完璧で驚くほど臨場感に溢れている。
いずれもプロコフィエフが戦後に作曲した晩年の作品で、彼と実際に交流のあったロストロポーヴィチ壮年期の覇気に満ちた演奏に価値があると言えるだろう。
ロストロポーヴィチは円熟期になると表現が次第に厚化粧になり、曲によっては解釈が必要以上に仰々しく感じられることもしばしばあった。
しかしこの頃の彼の演奏はさすがに若々しく颯爽としていて、切れ味の鋭いテクニックが縦横無尽に駆使されている。
チェロ・ソナタハ長調はロストロポーヴィチが作品完成に協力したことで知られるが、演奏も充分に練り上げられた完成度の高いものだ。
初演者はロストロポーヴィチとスヴャトスラフ・リヒテルのコンビだったが、この録音では協演を重ねたアレクサンデル・デジューキンが伴奏していて、ソロを充分に歌わせながらリズミカルで力強いサポートが密度の高い音楽を創造している。
交響的協奏曲ホ短調はプロコフィエフがロストロポーヴィチのために改作した作品で、初演は1952年にモスクワで行われたが、その時モスクワ青年交響楽団を指揮したのはリヒテルだった。
ロストロポーヴィチの技量に大きく依存している交響的協奏曲を、完璧な技巧でこなした上に朗々と歌い抜ける手腕は、ちょっと他に求め難い。
更にはチェロの名技性と歌謡性を、これ以上圧倒的に弾けるチェリストが他にあろうとは思えない。
一方小協奏曲ト短調はプロコフィエフがピアノ・スコアのみを遺して亡くなったために初演はピアノ伴奏版が1956年、カバレフスキーがオーケストレーションを施したフル・スコア版が1960年で、前者のピアニストはこのCDでソナタの伴奏をしているデジューキン、チェロはいずれもロストロポーヴィチが初演を飾っている。
これらの作品の難易度から考えても、如何にロストロポーヴィチが作曲家に信頼されたチェリストだったか理解できる。
またソヴィエト国立交響楽団を統率するロジェストヴェンスキーの強い意気込みも伝わってくる演奏だ。
むろん、3曲ともロストロポーヴィチのために書かれた作品で、彼が当時ソヴィエトでどんなに高く評価されていたかを示している。
まさに名演揃いのロストロポーヴィチのCDの中でも特筆大書すべきもので、レコード史上に永遠に残すべき至宝と言えよう。
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