2019年04月02日
ケンペ、シュターツカペレ・ドレスデンの際物的レパートリーの愉しさ
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ルドルフ・ケンペがシュターツカペレ・ドレスデンとの長いコラボで遺した名演と言えば、リヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲集がその代表格だが、ヨハン・シュトラウスを始めとする際物的な軽いレパートリーも少ないながら存在する。
その音源をUHQCD化したものがこのディスクで、わずか6曲、収録時間47分というのはいくらか短い気もするが、他には同メンバーによるセッション録音はないようだ。
1972年から翌73年に彼らのレコーディングの牙城ルカ教会で収録したもので、当時の首席指揮者はブロムシュテットだったので客演だが、勿論ドレスデンはケンペの古巣でもある。
録音状態は極めて良好だ。
ちなみにケンペはこうした曲目を1958年と60年にウィーン・フィルともEMIに録音していて、それらは英テスタメントからリリースされた12枚組のCD7に収録されている。
聴き比べるとドレスデンはウィーン・フィルほど洒落っ気や遊び心はないし、団員自身が愉しんでいるような開放感もウィーン・フィルには敵わないだろう。
ワルツで二拍目の後打ちを先取りするウィーン流のリズムの取り方はドレスデンも試みているが、これもウィーン・フィルの方が板についているのは当然だ。
しかし決して野暮ったい印象はなく、ケンペの統率によって誠実な姿勢が貫かれている真摯な演奏だ。
ウィーン風の優雅なスタイルとは異なり、ここではケンペの生き生きとしたタクトがドレスデンならではのドイツ風の美感を十二分に引き出している。
むしろアンサンブルの正確さや知的にオーガナイズされたダイナミズムではドレスデンが優っている。
ケンペはある程度ウィーン・フィルの即興性や自主的な表現に任せていて、細かい指示を出さなかったのかも知れない。
また音質では音源が新しいことに加えてUHQCD化されているので、こちらの方が俄然優位だ。
特にケンペが得意としていた『金と銀』に感じられるしみじみとした幸福感は素晴らしく、未だに同曲中最上の名演と言える。
ティロル地方の民族楽器ツィターのソロが入る『ウィーンの森の物語』も独特の雰囲気を醸し出していて秀逸だ。
彼らの演奏からもウィーンへの憧憬が伝わってくるようだ。
大規模な管弦楽作品やオペラだけでなく、こうした庶民的な小品にも絶妙な音楽性を示したケンペの手腕に改めて感心させられるアルバムになっている。
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