2019年04月08日

SACDで鮮烈に甦るマルケヴィチ、全盛期のフィルハーモニアとの『春の祭典』


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タワー・レコードのデフィニション・シリーズとしてSACD化されたマルケヴィチ率いるフィルハーモニア管弦楽団によるストラヴィンスキーの『春の祭典』、チャイコフスキーのバレエ組曲『くるみ割り人形』及び幻想序曲『ロメオとジュリエット』の3曲を収録したアルバムになる。

いずれも1959年ロンドン・アビー・ロード・スタジオでのステレオ・セッション録音で、EMIの初期ステレオ録音としては極めて良好な音源が、ハイブリッド仕様ながらDSD編集とリマスタリングによって鮮明に甦っている。

『春の祭典』では特にブラス、ウィンド・セクションの分離状態が良く、音場の奥行きにも不足していないし、『くるみ割り人形』ではチェレスタやパーカッション群の高音が無理なく伸展していて、繊細で心地良い響きが得られている。

『春の祭典』ではマルケヴィチの怜悧でシャープな感性が全盛期のフィルハーモニアの機動力をフル回転させて、ストラヴィンスキーの斬新で刺激的な音楽的創意をまざまざと見せつけている。

例の当時話題となったブーレーズ指揮、フランス国立放送管弦楽団盤よりも、約4年も先立つものであるというのは、充分に注目していい。

作曲者が望んだ通り、いかにも苦しそうにファゴットが吹き始め、ブーレーズの原型とも言える壮絶な演奏で、1959年時点におけるその緻密なリアリゼイションは感動的である。

マルケヴィチは透徹した眼差しを細部にまで行き渡らせながら、力強いリズム、大胆な色彩感、エネルギッシュなパワーと引き締まった構成力で、ブーレーズとは違った角度からこの難曲に挑戦し、それに成功している。

この作品は、優れた踊り手たちのためのバレエ音楽であり、同時に、初演時に一大スキャンダルを呼んだ20世紀前半の革命的な音楽だった。

この両方が納得できる鋭い切れ味と熱気が両立した演奏で、この作品が生まれた当時の息吹きをそのまま伝えているかのようだ。

『くるみ割り人形』はそれぞれの曲に非常にすっきりした輪郭が示されていて終曲『花のワルツ』も比較的快速のテンポを取って爽やかさを醸し出しているが、『ロメオとジュリエット』では巧みにテンポを動かして情動的な激しさも示されている。

マルケヴィチの曲想への踏み込みはたいそうラジカルで、スコアから鋭い洞察力で音楽を読み取る彼らしい手法だ。

筆者が『春祭』を初めて聴いたのは中学生の頃で、それがこのマルケヴィチ盤だったこともあって、その時の鮮烈な印象は今でも記憶に残っている。

録音状態から考えれば、その後ディジタル録音によるさまざまな指揮者、オーケストラによる同曲のCDがリリースされ、音質においてそれらの殆んどがこのディスクを凌駕しているのは明らかだが、当時音源の選択肢も知らなかった筆者が幸運にもマルケヴィチの演奏を聴いたことで、現代音楽に強い興味を持つという結果になった。

彼が『春祭』のスペシャリストで、来日時の演奏会が、我が国の音楽ファン、そしてオーケストラ関係者に強烈なインパクトを与えたことを知ったのは随分後のことだ。

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classicalmusic at 20:32コメント(0)ストラヴィンスキー | チャイコフスキー 

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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