2019年04月06日
コリン・デイヴィス、ロンドン交響楽団による『天地創造』ライヴ
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この2枚は2007年にコリン・デイヴィスが手兵ロンドン交響楽団を指揮したハイドンのオラトリオ『天地創造』全曲盤で、彼らの本拠地バービカン・ホールでの一連のライヴ演奏からの音源を自主制作でハイブリッドSACDシリーズとしてリリースしているアルバムのひとつになる。
次々に刊行されているこれらのディスクの総てが名演というわけにはいかないが、いずれも一定の高い水準を保ったコンサートでの彼らの力量が示されている。
録音状態はライヴながら客席からの雑音は全く聞こえない理想的な環境が保たれている。
特にSACDバージョンで聴くと明瞭な音質と抜けるような音の開放感が従来のCDと異なっていることが感知される。
この作品のようにオーケストラに3人のソリスト及び混声合唱が加わる大編成のオラトリオでは、総奏の時にレギュラー・フォーマットのCDでは音響が濁りがちになる傾向があるが、音像の独立性でもSACDの効果が表れているし、レチタティーヴォ・セッコのチェンバロ伴奏も繊細に響いている。
ハイドン円熟期のオーケストレーションが駆使された『天地創造』は、神の祝福に溢れた世界の創造と言う構想によって作曲されている。
直截的にキリスト教的世界観で彩られた内容と、絵画的ともいうべき巧みな手法でわかりやすく活写される動物たちの魅力や、大合唱が動員されて聴き映えすることなどから、欧米ではとりわけ人気も高く特別な作品として迎えられている。
こうした作品だけに『天地創造』は、優れた腕前で声楽作品を意欲的に取り上げてきたデイヴィスに相応しいものと思われる。
この演奏の特色としてデイヴィスはヴァイオリン両翼型配置(舞台下手から第1ヴァイオリン、チェロ、指揮者のすぐ正面に通奏低音、ヴィオラ、第2ヴァイオリン、上手奥にコントラバス)を選択し、ヴィブラートを控えめに、明らかにピリオド・アプローチを意識したアプローチを行っている点が注目される。
それだけにデイヴィスの表現は全体的に明るく、スケールの大きさよりもスコアの読みのきめ細かさに特徴のある演奏だ。
中でも第29番の混声合唱による二重フーガ『アレルヤ』では、精緻でありながら力強く歓喜に満ちた表現でこの作品のクライマックスを形成している。
ソリストにも実力派の歌手が揃っていて、中でも天使ウリエル役のイアン・ボストリッジは当時全盛期だったこともあって、流石に文学的にも巧みな歌唱と爽やかな声でこのオラトリオの価値を高めている。
彼はオペラ向きの歌手ではないにしても、宗教曲や歌曲のジャンルでは独自の才能を発揮しているテノールか主としては稀な存在だ。
尚ライナー・ノーツには全曲の英語歌詞対訳が掲載されている。
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