2019年04月16日

チョン・ミュンフン、パリ・バスティーユ時代の代表的名盤、《ムツェンスク郡のマクベス夫人》


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



《ムツェンスク郡のマクベス夫人》は、ショスタコーヴィチが生涯を通じて最も自由奔放な作曲を行った時期の総決算的な意味を持つ記念碑的作品の原典版。

意外にもショスタコーヴィチにはオペラが少なく、完成しているものは3作品で、このうちの1曲は本作品の焼き直し(改訂)だから、結局2曲となり、しかも、この2作は20歳半ばまで書き上げたものだ。

《ムツェンスク郡のマクベス夫人》が1936年の共産党批判を受けたため、ショスタコーヴィチがこの分野の作曲を犂躙鵜瓩犯獣任靴燭燭瓩世蹐Δ?

あまりに凄絶な内容はともかく、西欧の1920年代の前衛手法を巧みに取り込み、ドラマティックな表現力や緻密な構成、そして何より豊潤な旋律線は見事というしかない。

もしショスタコーヴィチが爛ペラ作曲家瓩箸靴導萍していたら、20世紀のオペラ史はかなり違ったものになっていただろう。

いずれにしても、同じ作曲家の6年前の佳作《鼻》などとは格違いの、20世紀のオペラの最高傑作のひとつである。

体制に抹殺されていたこの傑作のパリ初演の成果に基づくチョン・ミュンフン盤は、非常に優れた演奏である。

ダイナミック・レンジの大きな表現、歌と管弦楽のバランスも素晴らしく、この指揮者の緻密な音楽づくりと劇的センスの良さを強く印象づける。

このオペラには、太い描線で、濃く演奏するやり方があるとは思うけれど、もちろんチョン・ミュンフンはそうしてはおらず、細部のニュアンスを見事に拾い出す。

ここでも、さまざまなパロディやら何やらを投入して、まじめさと冗談の奇妙に混ざり合ったショスタコーヴィチの音楽を巧みに描いていくが、その際の手際の良さは大変なものだ。

このように作品の鮮烈さとともに叙情的な面にもよく配慮しながら入念緻密な音によるドラマを造形してゆくチョンは、刺激的な現代技法が隠し味に回る終幕が特に素晴らしい。

ここでちょい役の老囚を演じるクルト・モルの歌にただよう存在感もチョンの解釈を引き立てている。

20世紀を代表する傑作オペラの1つなのだと、この演奏なら得心がゆくし、暴力や性のオペラ化も、これならいける。

そして、この演奏の強みは、キャストがそれぞれ巧妙に歌で演技していることだろう。

性格的な役柄を得意にするユーイングをはじめ、ツェドニク(農民)、ザレンバ(ソニェートカ)、モル(老囚人)など、脇役まで隙のないキャストも充実している。

特にカテリーナを歌うマリア・ユーイングは、申し分なく魅力的な悪女になっていて、それに指揮者が同情の眼差しを注いでゆく。

あの手この手を繰り出して、暗いドラマを楽しませてしまおうとするショスタコーヴィチの狙いは、この演奏で存分に生かされることになった。

録音も歌唱と管弦楽のバランスに優れ、決別したチョンとパリ・オペラ座バスティーユの残した見事な記録でもある。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 20:09コメント(0)ショスタコーヴィチ  

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ