2019年04月14日

憑かれたような激しい情念、ジネット・ヌヴーのライヴを含む7枚


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ジネット・ヌヴー(1919-49)の録音集は既にコンプリート・スタジオ録音4枚組がドキュメンツからリリースされているが、ヴェニアスによってライヴを含めた彼女の1938年から49年までの音源が、よりインテグラルな形で纏められた。

1935年のヴィエニャフスキ・コンクールで僅か15歳だったヌヴーが26歳のダヴィッド・オイストラフを抑えて優勝したエピソードは両者のキャリアが語られる時、必ずと言っていいほど引き合いに出されるが、実際にはこの2人の演奏スタイルはデュオニュソスとアポロンに喩えても良いほど異なっている。

少なくともこの時期のヌヴーは強い感性に導かれるままに演奏しているように思える。

それは天才だけが成し得る技には違いないのだけれど、一方でオイストラフはクラシックの将来の演奏様式を先取りするような個性の表出を避けた高踏的な解釈が特徴だ。

残念ながら彼女は円熟期を迎えることなく夭折したので、その後どのような演奏を開拓したかは知る由もない。

しかしここに示された作品にのめり込むような濃密な情念はヌヴー若き日ならではの奏法だ。

しかも彼女は、当時としても稀有な、音楽に対する烈しい情熱と深い洞察力、解釈を構成する夥しい精神と明晰な知性をそなえており、並外れた自発性と詩的感覚がそれを支えている。

このようなテンペラメントは確実な技巧と結びついて、スケールの大きい、力強い演奏を生み出した。

彼女がベートーヴェン、ブラームス、シベリウスの協奏曲で、戦前からの巨匠に伍して充実した演奏をしたのもそのためである。

中でもイッセルシュテット、北西ドイツ放送交響楽団のサポートによるブラームスは白眉で、何かに憑かれたような激しさが聴く者を圧倒する。

2年前のスタジオ録音も構成力と感情表現のバランスが見事であったが、それに比べてライヴ録音の緊張感が演奏にいっそうの輝きを与えていて、臨場感があり、高揚した精神が演奏の隅々まで行き渡っている。

その反面、第2楽章では旋律を優美に歌わせて優美な情感を引き出している。

それはあたかも短く燃え尽きる彼女の人生を予感しているようで感慨深い。

ドラティ、ハーグ・レジデンティ管弦楽団のサポートによるブラームスは、3種類ある彼女の録音の最後であるが、彼女の演奏がますます充実してゆくのがよくわかる。

ブラームスのロマンティシズムを健康な精神と結びつけた彼女の解釈は、この曲の理想的な演奏を生み出している。

ロスバウト、南西ドイツ放送交響楽団のサポートによるベートーヴェンでも、彼女の力強い個性は、雄渾な解釈で、この音楽にあらゆる面から迫っている。

第2楽章の優美な表情は、彼女の幅広い、そして深い感情移入を示している。

ジュスキント、フィルハーモニア管弦楽団のサポートによるシベリウスも素晴らしく、この曲のロマンティシズムを線の太い解釈で豊かに表現し、テクニックもしっかりとしており、現在もこの曲の代表的な演奏の1つである。

得意としたフランス近代音楽でも、彼女は決して感覚的な魅力を求めていない。

ここに収められたショーソン、ドビュッシー、ラヴェルの音楽は、豊かな感情を伴って聴き手に語りかける。

今日でも、30歳でヌヴーほどの存在感を持ったヴァイオリニストは思い当たらないし、彼女は、他のヴァイオリニストが40代、50代で到達する精神的な深さを獲得していた。

それだけに、遺された録音を聴くことは大きな幸福であり、それは常に畏敬と驚きを喚び起こす。

彼女の芸術は、彼女の性別・年齢を超えて訴えかけるし、また、大曲、小曲にかかわらず、彼女の演奏は充実していて、狄燭侶歃儔鉢瓩箸枠狃に対して使われる言葉である。

ヌヴーはモーツァルトのように短い生涯を駆け抜けたが、あるいは彼女の生涯を見越して天がこのような充実感と完成度を与えたのであろうか。

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classicalmusic at 19:58コメント(0)ブラームス | ベートーヴェン 

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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